49.決着をつけました
はたして、それは成功した。
幻。幻覚、幻聴の上位互換。聴覚、視覚だけでなく、五感全部を刺激する。
細かいことを考える余裕はあまりなかったため、私も今、水に飲まれている。
(窒息…)
そう、目標は気を失わせることだ。
1分でいいかな。というか、私がきつくなってきた。
大体このくらいだろうか?もう意識があやふやだ。
「解除」
そこには不思議な光景があった。
皆が地面を向いて、ごほごほ咳き込んでいるのだ。
それは、残った二人も例外ではなかった。
「勝者、シェイン!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」」
気を取り戻した先生が宣言をし、それにつられて気を取り戻した生徒が声を上げ、それがまた気を取り戻させ…そんなサイクルが続き、長い歓声になった。
「おめでとう、シェイン様。」
「セイレーア様…なんで先にいったんですか…。寂しかったです。」
「頑張ったわね。」
セイレーア様はそっと、頭を撫でてくれた。
「治癒」
すこーしだけ。みんなに申し訳ないことをしたから、使うことにした。
「それにしてもあなたは伝説を作ったわね。」
「え?」
「神様さん」
「やめて下さい!」
「似合っているわよ。じゃあ女神様、かしら?」
「どちらも嫌です。」
「そう。だけど、これからは大変よ。」
「研究ですか?それだったら私は魔法について書けばいいだけなので。」
「そうじゃないわ。シェイン様の周りよ。」
「え?」
「自覚がないのね。だったらせいぜい困るといいわ。」
「セイレーア様?何か冷たくないですか?」
「気のせいよ。」
絶対気のせいじゃない!そう思うも言えなかった。
「シェイン、今日は完敗だ。だが、私が強いということは分かってくれたか?」
「まあある程度なら。」
「だったら嬉しい。」
何なんだろうな、この王太子。本当によく分からない。
「それにしてもどうやってあんなふうな作戦を考えているのだ?」
「勘…ですかね。」
ここで理論的ではないから王妃様には向いてませんよ、と暗に伝える。
「だったら魅力的だ!ぜひ(嫁に)来てくれ!」
「嫌です。」
確かに、勘によって暗殺を防ぐ王妃様もいそうだなぁ。失敗失敗。
「シェイン様、少し出かけてきますね。」
「気を付けて下さいね。」
「ええ。」
それはそうと、クラン様だ。最近よく出かけている。今日も遠足のあとすぐにこんなふうに出かけている。
しめた…!
私は今日、後をつけえうことに決めた。大丈夫、尾行なら断罪返し騒ぎのときに慣れている。私はなかなかの実力者だと思う。自分で言うことではないけど。
…あれは、ベルーゼ?ベルーゼは確かに一学年下だけど。いつの間に?
セイレーア様は結局、私の手助けなしに恋人ができそうだ。私はセイレーア様が協力しているというのに恋人ができない。これに関してはセイレーア様があちら側なのが悪いと思うけど。
それでも。
セイレーア様が幸せになることは。
望んでいたことなのに。
ほんの少し、胸が痛くなった。




