43.波紋は広がります
「今日から新学期の始まりだ。気を抜かず、頑張れよ」
「はい!」
同じクラスの女生徒たちがやってきた。
「シェイン様、自由に飛べるって本当なの?」
「そうですよ」
あ、そう言えば、転移とか使えないのかな?
「まあ!見てみたいわ!」
「……授業でならいいですよ」
「やったわ!」
「楽しみにしているわね」
「……お前、浮遊することが出来るようになったのか?」
今度はカンヴェス様がやってきた。
「そうですよ。治癒魔法も使えるようになりましたし、やっと聖女らしくなったんじゃないでしょうか?」
「お前はもともと聖女らしかっただろう」
「そうですか?そう思っていただいているなら嬉しいです」
「人気ね」
セイレーア様が来てくれた。
「セイレーア様のお陰ですけどね」
「シェイン様の実力あってこそよ」
「セイレーア様の発想力があってこそですよ」
「真似しないの」
「いいじゃないですか」
「まったく」
軽口を叩きあえる。その関係が嬉しい。
「シェイン様はどこまで魔法を見せるのかしら?」
「もちろん公開している範囲ですよ。あらぬ疑いなんてかけられたくありませんしね」
もしも王家にまだ言っていない魔法を広めたら、最悪の場合王家への反逆の疑いがある、と勘違いされるかもしれない。これが考えすぎだったらいいけど。
……新たな魔法の開発をすることで、あの3人から「愚息(私)に気があるのでは?」などと思われたら不愉快だ。
「それはそうね。では日常的に使うのかしら?」
「どうでしょうね。浮遊は使ってもいいでしょうが、治癒魔法はなかなか……」
「分かったわ。わたくしもあなたの友人として色々聞かれるかもしれないけれど、そう答えておくわ」
「ありがとうございます」
『セイレーアが友人で良かったねー』
(スピリア?)
『そうだよー』
『うちもいるよー』
(プレア?)
『もちろん私もいるからね!』
(ウィリア!)
『そうだよ。』
(夏休み中あまり現れてくれなかったけどどうしたの?)
「シェイン様?」
あ、セイレーア様に怪しまれてしまった。
「聖霊と話しているの」
「そうなのね」
納得してくれたようだ。
『えっとねー。仲間がいい持ち主見つけたからそれを見に行ってたー』
(優秀な子?)
『そうだよー』
(どんな子かしら?)
『まだ分かんないよー、赤ちゃんだし』
(それもそうね)
『あとねー』
(何?)
『スピリアはね、不貞腐れていたんだよ』
『ちょっとプレア、言わないの!』
(え?)
『シェイン様が全然使ってくれないからだって』
(そうなの? ごめんね。だけど私ももっと実力をつけたいから……)
『分かってるよ。分かってるからこそ不貞腐れていたの。』
(ふうん。じゃあなんで今話しかけてくれたの?)
『姿を見せるなら今がいいでしょー、って強引に引っ張り出した』
『やめて!』
スピリアが焦ってる……可愛い。
(いいじゃない、それくらい。あとスピリア、あなたがいなくて寂しかったんだからもうちょっと姿を見せてくれない?)
『寂しかったの?』
(そう)
『だったら仕方ないね』
(でしょう?)
『これからはちゃんと現れてあげる。』
(ありがとう!)
スピリア……赤ちゃんみたい。可愛い……
本日2回目に、またそんなことを思った。




