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41.肩身が狭いです

「どうやら治癒魔法を使えるようになったようじゃな」

「はい」


 今まで以上に緊張している。目の前にいるのは国王陛下と王妃様……ミアマ様。


 ただ、これだけだったら今まで通りだ。だが、期待が変わった。

 今まではこれからも頑張ってね、という程度の軽い期待だったと思うのだが、今回はこれからも素晴らしい成果を残してね、という圧力のこもった期待に聞こえてしまう。


 自分がこんなに人の期待に敏感だったのに驚かざるを得ない。


「あらぁ、これだったらうちの愚息の要望を叶えられる成果が出来るんじゃないかしら?」


 ミアマ様はまだそんなことを言っている。


「ミアマ様……毎回言っていますが、私は平民です。そのようなことはありえません。それに、この能力は遺伝するわけではありませんからより意味がないです」

「遺伝……するわよ?」

「え?」


 どういう事? 確かに魔力持ちは貴族が多いからそこに関しては遺伝なのだろうけど……


「だったらなぜ私は全属性を使えるのですか? そして属性は遺伝的な要素は見られなかったと思うのですが、それでも関係があると思うのですか?」

「そうよ。遺伝するのは魔力量だから。あなたの魔力量は多いもの。問題ないわ。あなたがなぜ魔法を使えるのかは分からないけれど……問題は無いのでは? ちなみに昔の聖女は貴族と子をなし、立派な魔法使いを産んだらしいわ」


 そんな……逃げられないじゃん。


「でも……平民の血がまじることは?」

「聖女の血が混ざるのが何だって言うの? 名誉じゃない」


 そんなものでいいの?


「由緒ある血は……」

「そんなものどうでもいいわ。というより優秀だったらいいのよ」

「はぁ……」

「ともかく! わたくしは息子の味方よ。あなたが覚悟を決めたときの準備は出来ているわ!」

「はぁ……」

「私も概ね同じような意見だ。できれば息子の要望を叶えてやりたい」

「そうですか……」


 まあ私の意思は尊重してくれそうだし、安心していいだろう。これからも全力で攻略対象者の好感度を上げる行動をしないでおこう!……それでも上がっているのが不思議なところだけど。


「そう急がずともよい。……話を変えようか」


 さすが国王陛下。人の気持ちを感じるのは得意だ。


「そうだな、そなたの子どもの時の話をしてくれ。出来れば孤児院以外の情報を。あそこは報告が来るからな」


 この国王陛下だから、この国は今も平和なのか。納得できるものがあった。


「曖昧な部分もありますがそこはご容赦ください」


 そして、私は伝える。



「参考になった。感謝する。これからも魔法の研究に期待しておるぞ」

「はい」


 最後は簡単なもので終わった。


 終わってみれば心理的負担はもう感じない。


 だけど、これからの魔法の研究に期待する、そう言われたとき、ミアマ様の目が少し怖かった。

 あれでは命令だ。


 そして、その先には王太子との……があるんだろう。


 ミアマ様も普通の人だということだ。不敬かもしれないけど。


 魔法の合成は楽しいものであったから、言われなくてもやるつもりだ。今までと違い、場所も与えられたから十分に実験することが出来そうだ。


 私は未来を想像して、明るい気持ちになった。

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