39.お久しぶりです
また美味しい昼食を食べ、時間まで本を読んで過ごす。
ちなみに王宮の図書館は最高だ。小説とかは少ないけれど、勉強本……というかそういう系はふんだんにある。
「時間です」
「はい」
お茶会室に向かう。
……はぁ。相変わらず豪華だなぁ。
正直言って自分には似合わない。そしていま来ているドレス。
それもなんというか……思ったより大変だ。ズボンというものがいかに便利だったかがよく分かる。
「失礼します」
部屋に入る。後ろからコリンナもやってくる。
「いらっしゃい。シェイン様、お久しぶりね」
「敬称などいりません」
意図していないが、コリンナと同じようなことを言ってしまった。
「そう、じゃあシェイン、ね。ただ、公の場では敬称をつけさせてもらうわ」
「それで構いません」
「わたくしは王妃、ミアマよ。名前で読んでね?」
「分かりました」
前に一度や2度会っているとはいえ、それは国王陛下への挨拶のついでに軽く話した、というくらいだ。
こんなふうにじっくりと話すのは初めてである。
「早速なのだけど、わたくし、精霊にとても興味があるの。色々教えてくれない?」
「……はい」
王妃様もそれか。なんだろう。少し寂しい。
……こうなると、学園であまり関わられなかったのはいいことだったかもしれないし、関わっている人もあまり話しかけてこなかった。
ふと王太子の顔が思い浮かぶ。……うん、まああの人はあまりないだろう。
「そう言えば先日はうちの愚息が失礼したわね。大丈夫だったかしら?」
「ええ」
「それならいいのだけど……。断ったらしいけど、何が駄目だったの? あなたは実績もあるし、問題ないとは思うのだけど」
「実績……それは聖女のことですか?」
「そうよ」
「もし、聖女を実績と入れるにしろ、もともとの身分の差は変えられませんよ。王家にも批判がいくでしょう」
これを機にミアマ様からを取り込んで、王太子の敵にしてしまえば……
「そうかしら? あなたは聖女らしく過ごしている。それだけで十分かもしれないわよ?」
「そんなわけがあるはずがないでしょう。聖女だからといってできるのは全属性を使うことのみ。お陰で属性を色々合わせたものも使うことが出来ますが、それだからといってそこまで役に立つものではありません」
魔法も色々試しているんだけどね。
複合とかいろいろ。
といっても複合すると言ったら驚かれたんだけど。
普通の人はそんなことは出来ないし、しようともしないらしい。……もし、色々複合させて、治癒魔法を使えたら、聖女らしくなるのかな?
そんなことは無いでしょ。自分でも馬鹿らしいと思う。
だけど、私の心が試してみたいと叫んでいる。
……今度やってみよう。
せっかく夏休みで時間は十分。問題ないだろう。
「そう? ではなぜ全属性のものが聖女と呼ばれるの?」
「それは……珍しいから……でしょうか?」
「それだけな訳が無いと思わない? 聖的ななにかがあるのよ、きっと。だからね……この夏休み、それを見つけなさい」
「はい……」
「そうすれば愚息に関しても文句は言えないでしょう?」
「そもそも身分が!」
あわてて味方に取り入れようと奮闘するも虚しく、ミアマ様は王太子側だった……




