37.巻き込まないでください
「お久しぶりです」
「シェイン、よく来た」
これは一体何のための時間なのだろう?
国王陛下と話すことなんて何も無いんだけど。
「ご支援のお陰で、不自由なく過ごせています」
「それは良かった。ところで、お主は精霊がみえるというが誠か?」
「はい。ただ、聖霊が見せてもいい、と思ったときじゃないと見せてくれません」
「そうか。素晴らしいな!」
すごい……のかな? 私としては自由に見たいのだけど。
ただ見れない人がほぼぜんぶを占める中で、見ることが出来るというのはたしかにステータスとは成り得るだろう。
「ところでシェイン」
「何でしょうか?」
「うちの愚息がお主に言いたいことがあるのだそうだ」
「どんな要件ですか?」
はて? 心当たりが全くない。
「……自分から言いたいそうだ」
「いいですよ」
……だけど、嫌な予感がするなぁ。
「シェイン」
「何ですか?」
「私と婚約してくれないか?」
「……へ?」
おっといけない。聞き間違えてしまったようだし、思わず平民としての素が出てしまった。
「どういうことでしょうか?」
「そのままだが?」
「普通に考えておかしいとは思いませんか?」
「何がだ?」
「こちらは平民生まれ、そちらは貴族生まれ。完全に成り立っていませんね」
「だが君は聖女だ」
「聖女だからといって覆るわけないじゃないですか。聖女は遺伝しません。王家にとってもメリットはありませんよ」
「政治的手腕もある」
「私は政治的な場に立ったことはありませんよ? なにか勘違いされているのでは?」
「してない! なんというか……その……君がいいと思ったんだ。しかも卒業パーティーでの騒動。あの後も普通通りにできたのは君のおかげだ」
そう言ってくれるのは嬉しいけど……
というか何それ。
まさに乙女ゲームにありそうなセリフを言われてしまったんだけど。
これが乙女ゲームの強制力?
まったく好感度を上げようとしていない攻略対象者にも求婚されてしまうの?
ゲームやる側だったらこんなゲームやめているね。
やめれないけど。
「そうですか。ですが婚約は関係ありませんよ」
「あっはっは」
「はい?」
急に国王陛下が笑い出した。
「なるほどなぁ。お前が言いたいことは理解した」
「ですよね?」
一体何の話をしているんだ? 私が中心人物なんだから放っておかないで話に入れて欲しい。
「そうだな。だが、相手が嫌がっているなら今はまだ婚約は辞めるべきだろう」
「そうですか……」
おい、王太子! なぜそこでショボンとする!
というかセイレーア様の王太子ルートが潰えた?
「セイレーア様はどうなんですか? 身分もあり、性格もいいし、何より優しいですよ」
「セイレーア? 彼女を確か狙っている人が……」
「それは本当ですか!? 誰ですか?」
それは嬉しい話だ。セイレーア様を幸せにする道も見えてきたかもしれない。
「名前は……個人情報だ。だからセイレーアに行くことはない。どうか私と結婚して欲しい」
おいおい、一歩先にいっているぞ。
「そこは言っても婚約ですよ」
「あ……すまない。つい気が先を向いてしまった」
いや本当何があったの? いつの間に好感度上がっていたの?
「この夏、君と関われそうだし、君に好きになってもらえるように頑張るよ」
「いえそれ以前の問題です」
そう言ったが聞き入れてもらえなかった。
……悲しい。




