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36.行くしかないです悲しいです

「シェイン、父上から言伝てだ。夏休みは王宮に来るように、だとさ。私も行くから一緒に行かないか?」


 それは夏休みの始まる前、地獄への宣告のように慈悲なく私を襲ってきた。


「はい……」


 王家は後ろ盾だから行くしかない。

 だけどさ、普通の人は夏休みの一ヶ月を王宮で過ごしたくはないと思うな。


 次の日、気がついたら私は馬車に揺られていた。

 どうやら嫌すぎて記憶を一部消したようだ。


「王宮……」

「いやいやだな」

「そりゃそうですよ」

「大丈夫だ、セイレーアが訪ねられるようにはしている」

「本当ですか!?」


 これは嬉しい。

 セイレーア様に会えるなんて……!


「もちろん、研究者の方にも会うことになるが……」

「それが嫌なんですけどね……あ、国王陛下には言わないでください」

「分かってる」


 それは良かった。

 いやいやが知られたらこれからの立場がなくなるところだった。貴族社会は面倒くさい。


 王城に着いた。

 ここに来るのは三度目だ。一度目が聖女だと発覚したとき、そして二度目が入学前。

 どちらも泊りではなかった。泊るのは今回が初めてだ。


「シェインを頼む」

「分かりました。それではシェイン様、部屋へご案内します」

「ありがとうございます」


 侍女、なのかな。

 そして部屋に通された。


「ここが夏休みの間過ごしてもらうことになる部屋です」


 とても豪華な部屋だった。

 それに、ベッドがある。寮のベッドは板同然でその上に布団が置いてあっただけだからなぁ。

 ああいうのもベッドとは言うけど、やっぱこんな感じの弾力のありそうな方がベッドって感じだよね。


「ありがとうございます。……ええと、あなたは?」

「失礼しました。夏休みの間、侍女として世話をさせていただきます、コリンナと言いいます。いつもは王太子殿下にお仕えしていますが……。よろしくお願いします」


 あらら……一ヶ月も私の世話をすることになるなんて……私は一人でも生活できるのだけど、…何か仕事をあげないといけないのかな?


「コリンナ……様? よろしくね」

「敬称はいりません」

「コリンナね。分かったわ」


 さっそく、荷物の片付けに入る。ほとんど服だったのだけど


 ……これ、私が服を持ってきた意味あったかなぁ?


 クローゼットの中には高級そうな服がいくつも入っていた。


「これは、…着ないと駄目なのでしょうか?」

「王妃様が楽しげに選んでおられましたからね。ぜひ来てあげてください」


 つまり着ろってことね。

 まあ私みたいな庶民に似合うかはともかく、こういった服を着るのは憧れと言われれば憧れだった。できればこんな気も抜けないものとしてじゃなくて遊びとして着たかったけど……


「片付けがある程度片付きましたら王に呼ばれていますので」

「分かりました」


「着替えてください」


 え?


「今すぐ向かうのでは?」

「まさか。せっかく王妃様が選んでくださったのですよ? それを着ないでいいはずがありません! 着てください!」


 ……おう、なんかキャラが変わっているぞ。


 コリンナに急かされた私が選んだのは、黄色いドレスだった。

 理由は私のオレンジの髪に似合いそうだったから。

 他の服も似合いそうだから選ばれたんだろうけど。


 久しぶりの対面なのだから、冒険はできるだけしたくない。それが本音だ。

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