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31.巻き込まれました

「セイレーア様、寮に帰りましょう」

「そうね」


 そう言ったときだった。


「!」


 後ろから羽交い締めされた。少し語弊があるかもしれないが、そんな感じだ。


「シェイン様?」


 セイレーア様も驚いている。

 だけど……


 私は、あまり目につけられないところに連れて行かれた。

 セイレーア様からここを見つけるのはちょっと難しいと思う。自分で何とかするしかないかぁ。


(スピリア)

『何?』

(魔力をたくさんあげるから、この後何かあったら私を助けてくれない?)

『たくさん? だったらいいよ!』

(ありがとう)


 良かった。これで大丈夫だろう。あとはこの人物。

 黒幕の命令で動いているんだろうけど、一体誰なんだろう?そしてこの前攻撃してきたのにもう攻撃されるの?何か理由でもあったのかな?

 それとも黒幕じゃなかったりして?


 次から次へと嫌な想像が溢れ出してくる。


 ……スピリアと喋ることができて良かった。


「シェイン様!」


 セイレーア様の声が聞こえる。答えたい。だけど口は塞がれてしまっている。


『声を届けようか?』

(そんな事もできるの?)

『うん!』

(じゃあ黒幕にさらわれたことと、犯人の特徴…私からは分からないけど教えといてくれる?)

『もちろん! アナレウス先生だってことも伝えておくね。』

(もう確定したの?)

『うん!』



 精霊……便利だ……

 その後、セイレーア様の声は聞こえなくなった。

 何をスピリアが起こしたかは分からないけど、伝わったのだろう。


「よし、いなくなったな。じゃあ行くぞ。喋るなよ」


 ……一体、アナレウス先生は何が目的なのだろう?


 その疑問の答えは分からなく、深い沼に沈んでいった。

 考えれば考えるほど深みにハマっていく……


 そして、私の意識は落ちた。



 目が覚めた。


 私は、椅子に縛られていた。


 ……これ、体が痛くなるやつじゃん。


 ふと手を見ると、インクで黒にまみれていた。


 ……一体何があったんだろう?


「起きたか?」


 アナレウス先生に聞かれた。無言で返す。


「早速だが、この契約書にサインをしてほしい」


 契約書? ろくなことにならない気がする。


(スピリア、この場所をセイレーア様に伝えて)

『はーい。……伝えたよー』


 速い……ただ、スピリアがこの場を離れるようなことは起こらなくて安心だ。

 これで何かあったら魔法を使ってもらえる。


「ペンを持て!」


 首を振って否定の意を伝える。大体口はふさがれている。

 喋ることはできない手は片手だけ空いていて、意外とやろうと思えば抜けられるかもしれない。


 そこで気づいた。


 もしかして、私の手が汚れているのはこの契約書にサインをさせようとしたから?

 それだったらサインしないほうが賢明だろう。


「お前、今の立場分かっているのか?」


 頷く。


「分かっているならもし拒否した場合、どうなるか分かっているのか?」


 どうなるんだろう? 私には聖女としての価値があるから殺せないと思うけど……


 最悪の場合は売られるくらいかな。

 ただ、その場合アナレウス先生には国から罰があると思うけど。


「せいぜい愉しむだけさ。」


 うわぁ。この先生嫌だな。早くセイレーア様来てくれないかな。

 現実逃避をすることにした。


(スピリア、先生には何の魔法が聞く?)

『えーっとねー、火と風は対策しているよー』

(ありがとう)


 火は使えない、か。しかも風も。風車と火で燃やすことは期待できないな。


(だったら土玉で足と手を打って)

『はーい』


 パンパンパンパン。

 乾いた音が響いた。アナレウス先生の手と足からは血が出ていた。


「……は?」


 ついでに口の自由を取り戻す。これもスピリアに頼んだら簡単にやってくれた。


「私は無力ではありませんよ。この場所にも時期に助けが来ます。先生の失敗は、事を急いでしまったことですね」

「……」

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