30.先が読めません
ゼノバ先生が連れて行かれた。
そりゃそうだ。
だって警吏の人たちはあの襲撃者達の嘘かもしれない証言を信じているんだから。
「ゼノバ先生、連れて行かれてしまいましたね」
「そうね。だけど何もしていないなら大丈夫じゃないかしら?」
「拷問とかされていたら……」
「警吏もそこまで愚かじゃないはずよ」
「ともかく、私たちが真犯人を見つければいいんですからね」
「そうよ。どうすればいいかは分からないけれど……」
薬学の授業があった。
「それでは、薬学の授業を始める。今日、お前らに作ってもらうのは傷薬だ。それも大きめの傷に対する。教科書を開け」
傷薬かぁ。
そして先生の指示に従って調合にはいる。
「お、シェイン。どんなだ?」
「まあまあですね」
「そうか? 俺にはよくできているように見えるが……」
「まだまだですよ」
「……まあ本人がそう思っているならいいか」
「せんせーい、じゃあ俺は上手いと思っていてもいいんですかー?」
あまり調合がうまいとは言えない男子が発言した。
「お前は駄目だ。下手なのに上手いと勘違いするやつはいずれ滅びる」
この先生……アナレウス先生はちゃんと生徒のことを考えているんだな。
そんなことを少しだけ感じれた。
「ところでお前ら、ゼノバ先生のことを聞いたか?」
ただ、アナレウス先生、悪癖があって、みんなが調合している時に話しかけてくるのだ。
お陰で集中できない。これがなかったらもっといい先生になれると思う。
……静かすぎるとそれはそれで困るけど。
「「「はい」」」
「なんともこの前の遠足で危険なことをさせようとした、とか。以前から思ってたんだが、ゼノバ先生は教師らしくない」
そうなの?
「ああいう教師も昔はもっといたんだがなぁ。だけど俺の教え方に文句は言ってくるしで正直迷惑だった。あの出来事が本当ならゼノバ先生はにどと教職に戻れないはずだ」
なんか変な先生だ。ゼノバ先生をいいと思っているのか悪いと思っているのか、まったくわからない。これはどう解釈するのがいいんだろう?
そしてそのまま授業は終わった。
「セイレーア様」
「何?」
「アナレウス先生っていつもあんなふうに他人の悪口を言っているんですか?」
「ええ、間違ってはいないわ。だけど、普段と比べても饒舌な気がするわ」
「そうですよね。怪しいと思いませんか?」
「どうでしょう? 言われてみればそうかも知れないわ」
うーん、セイレーア様があんまり気にしないってことは違うってことかなぁ。
わかんないや。
教室で話していたのだが、時折、バタッという音が聞こえる。
何か騒動でも起こっているのかな?
分からないけど、とりあえず気にしないことにした。
「少し、アナレウス先生を探ってみようと思います」
「どうやって?」
「スピリアで」
「ああ、なるほどね」
「正確には仲間の方ですけど」
「確かに便利そうね」
「便利だからこそ、あまり乱用しないように気を付けておかないといけませんね」
「そうね」
そして、次の日、事態は急変する。




