17.皆が訪ねてきます
あの授業の後、何故だか私が他二人に教えて、その二人の魔法技術が上がった、という噂が広まった。
……事実だけど。
そして……
「シェイン様、わたくし達にも教えてくださいませんか?昔の魔法というものを」
そういうお誘いがたくさん来ている。もちろん私はセイレーア様以外とは必要なだけしか会話したくない。
「二人が優秀なのですよ。カンヴェス様に教えてもらったら如何でしょうか?」
彼は少し戸惑った部分とかもあったから、教える際は親身になって教えてくれるだろう……。
本人にやる気があれば、だけど。
まあ彼女たちにとってもカンヴェスと喋るチャンスなのだから見逃す人はそうそういないだろう。
ともかく、そういう風に言って追い払っている。
それでも、
「なあシェイン、教えてくれないか?」
このように何度も教えを乞う人物がいる。王太子だ。
「ですからカンヴェス様に教えてもらえばいいでしょう。仲はいいはずですよね?」
「それとこれは別なのだ。あいつは全く教えようとしてくれないし」
「それは私も同じだと思いますよ?」
「君は一度教えたという実績がある」
「そうですか……ですが、私が教えたのはセイレーア様がいたからですよ?」
そして、セイレーア様がカンヴェスに興味を持ってくれればいいかもしれない、という思いがあったから一緒に教えたのだ。
そういうメリットもないのに教えるわけがない。
いや、メリットがあっても教えるかは……相手によるかも。
「また来る」
「来なくて結構ですが?」
聞こえるようにつぶやいたはずなのに聞こえていないふりをされた。悲しい……。
やはり王太子はあまり好きになれない。
……よし、気分を変えよう。
「セイレーア様、この後部屋に来ませんか?」
「シェイン様の?」
「あ、侯爵令嬢に見せるような部屋ではないので……やめましょう」
「いえ、行きましょう! シェイン様の部屋、行ってみたいわ。それにわたくしは相部屋ですもの。シェイン様が羨ましいわ」
「確かに私は一人部屋ですからね。中を見ても驚かないでくださいね」
「もちろんよ!」
私の部屋が一人部屋なのは一重に入学のタイミングによるものだ。
その時は空いている部屋がなく、また平民の身分と貴族は相部屋にできない、と判断され、相部屋を一人で使っている。
さらに、謹慎もあって、その間に他の人を入れることは出来なかったから、この状態が続いている。
もし、私の聖女としての立場がもっと確立されれば、貴族と同じ部屋になることもあるかもしれない。
「どうぞ」
「お邪魔します。……」
無言になるセイレーア様。
やっぱり驚かれるよね。私、あんまり物持っていないし。飾りなんてもってのほかだし。
ゲームでは……攻略対象者から何か貰っていたんだっけ?
まあ資金は王宮からもらっているには貰っているから、単純に私が使っていないだけ、となる。
「驚きますよね?」
「ええ、あまり想定していなかったわ」
やっぱりね。
「お金をたくさん使うのは性に合わなくて……」
「シェイン様らしいわ。こういうのもいいと思うわよ」
励ましてくれている……。なんとお優しい。
「では、スピリアも交えてお話ししましょう。声だけですけど」
「スピリアも? 楽しみね!」
そして、誰にも邪魔されない場所で二人と一体、楽しく過ごした。