10.何かが聞こえてきました
私は1ヶ月間、ほとんど部屋の中にいる予定だ。
見張り(使用人)として1人が貸し出されているから、買い物とかはその人に任せて、自分は一人で勉強していたり、料理をして過ごそうと思っている。
ちょっと寂しいかもな……とは思ったりするけど、自分の不甲斐なさが招いたことだから気にしない気にしない。
勉強といったが、ここで頑張ろうとしているものは、魔術の理論というものだ。この乙女ゲームを作った会社は別に深く考えて作ったわけではないだろうがこれが面白い。
そして、今まさに勉強中だ。
本によると、精霊がいて、その属性の魔力を精霊がもらうことで、その代わりに魔法を発動させているらしい。
……ということは、今もここには精霊がいるのかなぁ? いるなら、見たいなぁ。
そんなことを思ったりもしつつ……
『ええ、いますよ』
何か声が聞こえてきた。いますよ? どういうことだ?
『私は精霊です。シェイン様の魔力を普段から貰わせて頂いています』
恐る恐る声が聞こえてきた方向を見ると……精霊と思われるものが、いた。
「えええ! 私、精霊を見ることできるの?」
『シェイン様は全属性持ちですからね』
「じゃあなんで今までは見えなかったの?」
『シェイン様を困らせてはいけないと思い、隠れていたのです。ですが先ほど、私たちを見たいと仰せになったので、現れることにしました。……現れないほうがよかったですか?』
そう言って少しショボン……とする精霊。
そんな精霊の見た目は…まず軽く光っている。そして銀色の髪に水色の瞳。髪の毛は長く、腰まである。
大きさは5歳児くらい。予想より大きかった。そして、羽があり。宙に浮いている。
「か……可愛い〜〜!!」
そう、とても愛くるしい存在である。
「ねえ、触れるの? 触ってもいい?」
『シェイン様なら……どうぞ』
ほっぺがもちもちしていた。そして羽。透明の羽なのだが…そんなに弱々しくなかった。ちなみに羽に触らせてもらうために今、精霊には座ってもらっている。
「ねえ、名前は何ていうの?」
『私ですか? ついていませんよ』
「そうなの? じゃあ付けてもいい? ……あ、もちろん許可はもらうよ?」
『いいですよ』
「本当!? どうしよっかなぁ」
精霊の名前かぁ。あれ?もしかしてこれって私の初名付け? 超重要じゃん!
「じゃあ、あなたの名前はスピリア」
確か英語では精霊のことをスピリットって呼んでいたはず。
『スピリア……。ありがとう、シェイン様』
「様付けはやめて。対等な関係でしょ?」
私の勘違いでなければ。だって私が魔力をあげて、それを精霊が変換する。対等だよ……ね。
『そうだね、じゃあ今度からシェインと呼ぶね』
「うん、そうして」
『あ、私は心を読むことができるから声は出さなくていいよ』
「え?」
だけどよく考えてみたら確かにその通りなのだろう。
はじめに声を掛けられたとき、私は心のなかで考えていただけだった。
「だけど、しゃべっている方が楽しいから出来るだけ声は出したいな」
『だったらいいかー』
「そうそう、気にしないでいこう!」
そして、私の謹慎は思わぬ形で楽しく始まった。