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ep.7 キャラランドの日常2月21日

都内・初台。新宿の高層ビル群を少し外れた場所に、その事務所はひっそりと存在している。

築30年以上は経っていそうな、味のあるレンガ造りの建物。その二階にあるのが


——芸能事務所『キャラランド』。


名前だけ聞くと、アイドルや俳優が集う華やかな空間を想像するかもしれない。しかし、実際に中へ足を踏み入れると、その印象は大きく覆る。


「……あ、ちょっと! ぽこぺん、それ触っちゃダメ!」

「くぅ〜ん……」


入り口すぐのソファには、鬼のマスコットキャラクターが注意をされしょんぼりと座っていた。

キャラランドは元々マスコットキャラクター専門の芸能事務所だった。遊園地のパフォーマー、企業の公式キャラ、ご当地キャラ、子ども向け番組のキャラクターなど、実は世の中には本当に多くのマスコットキャラクターが活躍している。


「雨野さーん! この間のイベント、ぽこぺんのアクションシーン、めっちゃ盛り上がりましたよ!」

「ああ、そうか。じゃあ、次回もバク転入れる方向で」

「まじすか!? ぽこぺん、あの体型でバク転いけます!?」と雨野の突拍子もない提案に岡が驚いた。


奥のデスクでは、マネージャーの猿田宮彦さるたみやひこが電話を片手に、マスコットキャラクターたちと打ち合わせをしている。温和で面倒見がよく、キャラランドの歴史をよく知るベテランマネージャーだ。


事務所内には、色々なマスコットキャラクターが自分の出番を今か今かと待機をしている。昔、遊園地やイベントで活躍したマスコットキャラクターたちが並んでいる。新しく訪れた人は、まずこの光景に圧倒される。


そして、そんなキャラランドに、新たな変革が訪れようとしていた——

「よし……今日も頑張るぞ!」

オフィスの奥の小さな社長室。

そのドアを開けて出てきたのは、稗田椿ひえだ つばき。キャラランドの二代目社長である。

25歳、新米社長。父の急逝により突然事務所を継ぐことになった彼女は、かつてのキャラランドの勢いを取り戻すべく、新たな挑戦に打って出た。


——マスコットキャラクターだけじゃない。アイドルユニット事業を立ち上げる。

アイドルユニット事業所属のタレントは、練習生の「佐藤翔太」ただ一人。

数日前からオーディションをスタートさせたばかり。

まだ何もない、この小さな事務所から、エンタメ界にはばたくアイドルユニットを育てるのだ。


「おはようございます、社長!」

「おはよう、岡さん! 今日もよろしくお願いします!」

中堅マネージャーのおか あゆむが、後輩マネージャー猫沢ゆうの淹れたコーヒーを片手に挨拶する。


彼は、新たなアイドルユニット事業のリーダーであり、彼もまた新アイドルユニット結成に向けて奮闘するひとりだ。


「ところで椿社長!、オーディションの応募、増えてますよ」

「本当!? どんな子からエントリーが来てるんでしょうか??」

「音楽をやっている子、芸能経験のある子もいれば、未経験だけど面白そうな子からのエントリーも来ています!」

「……そっか。これは、私たちも本気でやるしかないですね!」


キャラランドは今、大きな転換期を迎えている。

——かつて、マスコットキャラクターが夢を運んだ事務所。

——「LoHi(リーグ・オブ・ハイパーディメンショナル・アイドル)」

 新たなアイドルリーグへの参戦を表明。

——今、新たなアイドルユニットが生まれようとしている場所。


この小さなオフィスから、未来のスターが羽ばたく日が来るかもしれない。

「さあ、今日も頑張ろう!」

稗田椿の声が、活気づく事務所に響いた。


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