ep.47 推しの未来も、キャラランドの未来も――藤原真希の祈り
最初は、ほんの偶然だった。
「キャラランドGENSEKIオーディション」のことを知ったのは、たまたまSNSのタイムラインに流れてきた短い動画だった。
その投稿には、応募者が歌う様子と「推しがデビューする未来を、あなたの一票で」なんて言葉が添えられていた。
軽い気持ちでタップした動画で、私はひとりの応募者に出会った。
真っ直ぐな声で、まっすぐな目をしていて、上手く言葉にはできないけれど──気づけば、何度も再生していた。
その日から、私はキャラランドGENSEKIオーディションを追いかけるようになった。
配信を観て、投票をして、Xで感想を呟いて。
少しずつ、その人のことを「推し」と呼ぶようになった。
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でも、オーディションが進むほどに、私の心はざわついていた。
もし彼が、オーディションに合格できなかったら──。
自分でも驚くほど、感情が動いていた。
不安で、怖くて、結果発表のことを考えるたびに心臓が痛くなった。
そしてふと思った。
もし彼が不合格だったら、私はキャラランドの新ユニットを、彼がいないユニットを笑顔で応援できるのだろうか?
応援してきたのに、「推し」の名前が呼ばれなかったときの虚しさ。
何事もなかったかのように、新しいユニットを応援できるほど、私は器用じゃないかもしれない。
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そんな自問自答を繰り返していたある日、ふと立ち止まった。
「じゃあ、自分はどうしたいの?」と。
考えて、考えて、出した答えは、とてもシンプルだった。
──彼がどんな道を選んでも、私は応援していたい。
あの声が好きで、あの姿勢が好きで、あの人に自分の夢を重ねた。
だから、合否に関係なく、活動を続けてくれる限り、ずっと見ていたい。
それが「推し活」なのだと、ようやく気づいた。
そして、キャラランドのことも思い出した。
彼と出会わせてくれた舞台。
その場所には、彼以外にも胸を打たれた人たちがたくさんいた。
歌が好きな人。
演技が上手な人。
一生懸命にステージで笑っていた人。
最初は一人の「推し」の存在だけだったけど、気づけば私は、キャラランド全体に心を動かされていた。
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もう、迷っていない。
たとえ彼がユニットに入らなくても、私はキャラランドの新ユニットを応援する。
だって、ここで「推し」と出会えたから。
それに、彼を応援してきたこの日々が、全部宝物だから。
スマホの画面に表示された、オーディション結果発表までのカウントダウン。
その数字を見ながら、私は小さく息を吐いた。
──どうか、名前が呼ばれますように。
──でも、たとえ呼ばれなくても、私はずっとファンでいよう。
そう、決めたから。




