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ep.47 推しの未来も、キャラランドの未来も――藤原真希の祈り

最初は、ほんの偶然だった。


「キャラランドGENSEKIオーディション」のことを知ったのは、たまたまSNSのタイムラインに流れてきた短い動画だった。


その投稿には、応募者が歌う様子と「推しがデビューする未来を、あなたの一票で」なんて言葉が添えられていた。

軽い気持ちでタップした動画で、私はひとりの応募者に出会った。

真っ直ぐな声で、まっすぐな目をしていて、上手く言葉にはできないけれど──気づけば、何度も再生していた。

その日から、私はキャラランドGENSEKIオーディションを追いかけるようになった。

配信を観て、投票をして、Xで感想を呟いて。

少しずつ、その人のことを「推し」と呼ぶようになった。


________________________________________

でも、オーディションが進むほどに、私の心はざわついていた。


もし彼が、オーディションに合格できなかったら──。

自分でも驚くほど、感情が動いていた。

不安で、怖くて、結果発表のことを考えるたびに心臓が痛くなった。

そしてふと思った。

もし彼が不合格だったら、私はキャラランドの新ユニットを、彼がいないユニットを笑顔で応援できるのだろうか?

応援してきたのに、「推し」の名前が呼ばれなかったときの虚しさ。

何事もなかったかのように、新しいユニットを応援できるほど、私は器用じゃないかもしれない。


________________________________________


そんな自問自答を繰り返していたある日、ふと立ち止まった。


「じゃあ、自分はどうしたいの?」と。

考えて、考えて、出した答えは、とてもシンプルだった。


──彼がどんな道を選んでも、私は応援していたい。

あの声が好きで、あの姿勢が好きで、あの人に自分の夢を重ねた。

だから、合否に関係なく、活動を続けてくれる限り、ずっと見ていたい。

それが「推し活」なのだと、ようやく気づいた。

そして、キャラランドのことも思い出した。

彼と出会わせてくれた舞台。

その場所には、彼以外にも胸を打たれた人たちがたくさんいた。

歌が好きな人。

演技が上手な人。

一生懸命にステージで笑っていた人。

最初は一人の「推し」の存在だけだったけど、気づけば私は、キャラランド全体に心を動かされていた。

________________________________________


もう、迷っていない。


たとえ彼がユニットに入らなくても、私はキャラランドの新ユニットを応援する。

だって、ここで「推し」と出会えたから。

それに、彼を応援してきたこの日々が、全部宝物だから。


スマホの画面に表示された、オーディション結果発表までのカウントダウン。

その数字を見ながら、私は小さく息を吐いた。

──どうか、名前が呼ばれますように。

──でも、たとえ呼ばれなくても、私はずっとファンでいよう。

そう、決めたから。



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