ep.46 最終オーディションメンバーへ贈る、ギルドの“愛と飯テロ”フルコース
キャラランド本部のホールに、いつになくにぎやかな空気が満ちていた。
「みんな!今日はぼくらギルド567メンバーから、最終オーディションメンバーへの“お疲れさま会”ってことで——サプライズパーティーだよ!!」
声高らかに宣言したのは、しゅんピーこと新井 駿輔。
テーブルの中央にドンと置かれたのは、こんがり揚がった山盛りのからあげ。
「これ、うちのばあちゃんが作ってうた甘めの醤油とにんにくの効いたやつ!
“疲れた時にはこれ”って、小さいころからずっと食べてきたんだ」
その香ばしい香りに誘われて、次々と現れるギルドメンバーたち。
「ピザ、持ってきた。熱いうちに食え」
八塚 大牙は無表情で言いながらも、持ち込みの袋から「ぴざ」の箱を次々と並べていく。その数、24枚。
「1人3枚としても足りるかわからん」
「えっ待って、数え方が格闘技」「この人、本気すぎる……」
「みんな、かっこよかったよ。よかったら、どうぞ」
白輪 友隆が差し出したのは紙パックジュースの詰め合わせ。バリエーションも豊富で、冷たさが嬉しい。
「最終オーディション、お疲れ様でしたーっ!」
Harmoniaの8人が、ぱっと花が咲いたように登場する。
テーブルに置かれたのは、おっきなケーキと山盛りクロワッサン。
「甘いの苦手な人はこっち!」「余ったら持って帰ってね〜」
「てか、差し入れまでアイドル感すごい」「顔と声がいいのに性格までいいって反則では?」
「ババンッ!冷えてるよ〜っ!」
掛川 仁亜がクーラーボックスを開けると、中には北海道限定のオレンジ色のサイダーがぎっしり。
「リ〇ンナポリン!これなまら冷えてるんだから!」
「いや、これ東京じゃ見たことないぞ……」「北海道限定土産ってレベル超えてる」
「皆さん、お疲れ様です」
柳楽 茜が手にしたのは、丁寧に包まれたハーブのサシェ。
「こちら、カモミールです。リラックス効果がありますので、今日ぐっすり眠れますように。え?カモミールはですね、ハーブの一種で…略」
「……って説明長っ!」「でも優雅すぎて何も言えん」
「サンドイッチ、よかったらどうぞ」
稲波 力哉がクーラーバッグを開けると、色とりどりのサンドイッチが整然と並ぶ。
「具材、いろいろあるんで、お好きなものを」
「え、断面が美しすぎる」「料理番組かよ」
「お疲れさま〜。いっぱい食べんさいね」
鉄板の前に立っていたのは三浦一佐。あつあつのお好み焼きを手際よくひっくり返しながら、にこやかに呼びかける。
「ふわふわ……!」「プロの所作……!」
「肉だよー!!」
テンションMAXの桧山 葉が肉パックを振りかざし、隣の天利 真舟が静かに飲み物を並べていく。
「ジュースもありますので……あ、鉄板焦げてます」
「えっ、ジュース係!?」「鉄板見張り役じゃないんだ」
ふらりと現れたのは澤山 伊織。
「……ちゃんちゃん焼き、作ってきたんだ。よかったら……」
鮭の香ばしい匂いに、全員が一斉に振り返る。
「えっ、和の極み来た」「こんなに多国籍な差し入れ初めて」
そっと置かれたカルボナーラの大皿には、うさぎの旗が立っていた。
高峰 悠楽は赤くなった顔を隠すように視線を落としながら、ぽつりと呟く。
「作りすぎちゃって……でも、みんなで一緒に食べてほしいなって」
最終オーディション参加者からも手作りの差し入れ。
悠楽の呟きに、とたんに「尊い……」の大合唱。
「その発想がすでにアイドルなんよ」「料理うまい男子、好感度上限突破だわ」
いつのまにかテーブルはごちそうで埋まり、最終オーディションを戦い抜いたメンバーたちが、どこか照れくさそうに、でも嬉しそうに口元をほころばせていた。
「……ぼくら、ひとりじゃなかったんだな」
そんな誰かの言葉に、仲間たちの笑顔が重なっていく。
ギルドらしく、あったかくて、ちょっと騒がしくて、心のこもった“おつかれさま会”は、こうして夜が更けるまで続いた——。




