ep.34 新ユニットアイドル只今、スポンサー数・・・『0』!?
「……いよいよ、ここからが本番です!」
キャラランド事務所の会議室に、椿社長の声が響く。
彼女の前には、LoHi参戦に向けて編成された新ユニットの企画書と、山積みの企業リスト。
どこか神妙な面持ちで、スタッフたちが彼女の言葉に耳を傾けていた。
「LoHiって、想像以上に「お金」がかかるんですね……」
猫沢マネージャーが、思わずつぶやく。
「うん。レッスン、楽曲、衣装、PR動画……そして、リーグ開幕前のメディア展開とライブ準備。それにかかる制作費と人件費、リーグの参入料……」
隣の岡マネージャーが頷きながら説明を補足する。
事実、キャラランド単体の営業力や資金繰りでは、現状かなり厳しい状況だ。
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「──現時点でのスポンサー契約数、『0』・・・。ただし、商談中は3社。」
椿社長はそう言い切り、ホワイトボードに丸をつけていく。
ひとつは地方のアミューズメント企業。
もうひとつはメディア系の中堅代理店。
そして、最後のひとつは、最近急成長中の音楽系スタートアップ。
「まだ“0”ですけど、私は、絶対に“0”のまま終わらせません。やりますよ、なんとしても」
彼女の眼差しは、キャラランドギルド567の立ち上げ時のように鋭く、そして迷いがなかった。
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「でも、どうするニャン?正直、これまでのやり方では、キャラランドの知名度だけで即決してもらえる状況じゃ……」
猫太Pが静かに口を開いた。彼の指摘に、全員がうなずく。
「だからこそ、やるのは“これまでにない方法”です」
椿社長が取り出したのは、一枚のA4資料。タイトルにはこう記されていた。
『キャラランド製作委員会構想案』
「参加してもらった代わりに権利を明確化し、新しいアイドルユニットが売上のサポートして売上の一部をロイヤリティとして分配するモデル。これまでの“宣伝型”スポンサーじゃなく、ビジネスとして投資できる形を整えます」
「コンテンツ単位での参加た、小口での参加も可能にして、小回りの効く製作委員会方式も考えています。。メインスポンサーが1社決まらなくても、複数企業で支える形を取れる....」
岡マネージャーが食い気味に続けた。
「え、それって……まさかその話、本気で進めてたんですか!?」
「一部商談相手とはすでに話を進めています。社内で先に合意を取っておきたくて、今日ここで話しました。他にも多くの企業やオーディエンスが、新アイドルユニットに関れるような仕組みを考えています。」
「これが、私たちの挑戦の第2章です。
“スポンサー0”から始まるLoHi挑戦の、逆転劇をここから作りましょう」
椿社長の言葉に、スタッフたちの目の色が変わる。
“0”であることは、恥ではない。
“0”から動き出せる勇気こそ、未来を変える最初の一歩。
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その日以降、キャラランドの営業部隊は動き始めた。
従来のスポンサー枠だけではなく、 “一緒に創る”という提案を手に。
彼らの戦いは、まだ始まったばかりだった──。




