ep.26 LoHi参戦をかけた参入募集
港区の高層階にあるプライベートダイニングルームに、今夜は4つの芸能事務所の社長たちが顔を揃えていた。
LoHi——League of Hyperdimensional Idols。
その設立が発表されてから数ヶ月。業界の空気は明らかに変わっていた。
これはただのイベント企画ではない。
未来を賭けたアイドル業界の新しいプラットフォーム。
テーブルに並ぶワイングラスを手に、最初に口を開いたのは、烏森芸能の代表、烏森雅だった。
「さて。『LoHi』について、すでに参入が決まっている発起芸能事務所の我々5社のユニットの他、残り3枠をかけて複数の芸能事務所や企業から問い合わせを受けています。
今日は既に「LoHi」参戦を表明している2社をお呼びして、「LoHi」残り3枠について説明させていただこうと思っています。
江ノ島プロモーション神代社長、キャラランド稗田社長、今夜はようこそいらっしゃいました。」
「お二人とは、初めてお目にかかります。アプロプロの朝日陽翔です。」
烏森社長の横に座る青年が挨拶した。
「初めまして。」椿社長と、江ノ島プロモーションの神代社長の声が重なった。
「ご紹介が遅れました。今日は発起人の一人でもあるアプロプロ朝日社長にも同席いただいています。」
「さて、LoHiの残り3枠に、お二方の事務所の他、現在5社から問い合わせが来ています。問い合わせは国内に留まらず、うち1社は韓国の大手芸能事務所、さらに外資系投資会社がバックについた新興グループからの打診もある。今後も増える見込みです。」
「5社…」
江ノ島プロモーションの神代悠馬は眉をひそめた。
「つまり、このままじゃ3枠には収まらないってことか…」
「ええ、その場合にはLoHi開幕の前に『LoHi参入バトル』を開催します」
烏森の声に、場が一瞬、静まり返る。
「LoHiの開幕直前に、LoHi参入に最もふさわしい3組を選ばせていただきます」
「それって、ライブパフォーマンスで決めるということでしょうか?」
椿が問いかけた。これまでテーブルの向こうで静かに耳を傾けていたが、ここでわずかに身を乗り出した。
「“パフォーマンスの実力”での参入選考というわけですね」
「その通りです。参入バトル当日は、パフォーマンスを審査員審査とバトル会場にいるオーディエンスの審査により審査する予定です」
烏森は答えると、グラスの縁を指先でなぞった。
「神代社長、稗田社長は、参戦バトルか開催されないよう祈るばかりだと思いますが、私は参戦バトルを歓迎しますよ。その方が「LoHi」が面白くなる。」
椿は、静かに覚悟を決めるように言った。
「キャラランドの新アイドルユニットは、参戦バトルが開催されるとしても、勝ち残って必ず『LoHi』に出場します!」
烏森社長は、椿社長の宣言を聞き、微かにほほ笑んだようだった。
LoHi参戦を賭けた戦いは、もう始まっていた。




