第8話「伏兵に告ぐ」
大きな爆発とともに萌香とソラは離れて飛びまわる。煙があたりに広がる――
攻撃は双方から。
と思いきや1つの影がスッとなくなる。
ソラの燃える鉄拳を桐生は黒ステッキで防ぐ。
「どこかでみた杖ね」
「これはステッキと言うのよ? 教養がない人間だと言うことがバレバレね」
「あんな変な営業している奴の言うことか!!」
「普段はあんなことなんてしないよ。あんなことをしなくたって商売繁盛するぐらいウチは儲けているから。あれはサービス。これから殺される人へ冥土の土産にね」
「なめたことをほざきやがって!」
「同業者じゃない? ライバルには手加減なんてしないでしょ? DROPOUTの銀山ソラさん。いや? CEAのメアリー・ダーマーだったかしら」
「なっ!?」
グラッ。
ソラの視界が揺らぐ。
敵は自分のことを知っている……その事実を知ったからではない。それはその間合いに入ったからだと彼女の直感が教えてくれる。
「ぐっ…………」
ソラは仰向けにさせられる。
桐生はステッキをくるくる回していともたやすくソラの身体を操っているようだ。やがてステッキの切っ先をソラの胸にそっと突きたてる。
息が次第に苦しくなる。重たい重圧に何もかもを奪われてゆくのを肌に感じていくようだ。
「CEAとは繋がりがあるようだけど、今は分裂して私たちに手をだせるヤツとそうでないヤツといる事をわかっているわ。あなたが後者であることもね。可哀想だけど、自分が舛添サイドにつかなかった事と弱い事を嘆いてお逝きなさい。ヴ……」
「おい」
桐生がソラを破ろうとした刹那、萌香の声が耳にはいる。パッと振り向くと、そこに木刀を持った彼女と倒された同胞2人をみた。
視線をソラのいた方に戻す。そこにもうソラはいない。彼女は一瞬の隙をついて逃げだしたようだ。
桐生はチッと舌打ちをして萌香を見る。
「私の友達を今どうしようとした?」
「貴女こそどうしてくれているの?」
「殺しちゃないよ。弱い者いじめはしないんだ。私は。弱いのに襲ってきたら叩いてやっただけ」
「ふふ、思っていたより優しい狸さんね?」
「なんだと?」
「かかってきなさい。ここで貴女達を殺してあげることこそが本当の優しさというものです」
「馬鹿にすんじゃねぇ!!!」
桐生の挑発に萌香は木刀を振りかざして飛びかかる。
「萌香!! ダメ!! ヤツの間合いに入るな!!」
離れたところからソラの大声が。
グラッ。
桐生に接近したそのときに萌香の全感覚が揺れてしまう。
「火のなかに飛びこむ虫と言ってあげたほうが親切だったようね……!」
萌香の攻撃を軽やかにかわした桐生はそう言って吐き捨てた。
が、次の攻撃をする間もなく彼女は彼女の頬に違和感を感じた。
「む、むし? ぎ、ギャアアアアアアァァァアアアァァァアアアァァァアアアァァァアアアァァァアアアァァァッ!?」
強者感満々の魔女は走って逃げていった。
萌香とソラのもっと後方にいた段ボールが動いてはずれる。
「こんなに色鮮やかで可愛いのにね?」
高津の手には赤みの強いゴキブリが掴まれていた。
「グッジョブ! ブサイク蟲野郎! ソラたん、今度コイツに飯を奢ってやれ!」
「えぇっ!?」
萌香たちは危機を切り抜けたようだ――




