第2話「おやっさん、いってきます!」
愛媛県庁。その一室で愛媛県知事の中谷篤子が2人の客人を招いていた。
「ご招待に預かり光栄です。エリートのなかのエリートとして知事の要望に応えたいと思います」
丁寧にお辞儀をするのは四国警察局長の小池忍。
「そんなかしこまってどうするのよ? 同期の桜じゃない? アタシたちってさ」
愛媛一区からの国会議員、板尾敦盛。彼は性的マイノリティーを特徴に持つ、元自衛隊幹部のオネェ。小柄な小池とうってかわってとても大柄で筋肉質な体がその雰囲気を放つ。
「最近になっても狸共が集団一揆を企んでいるぇ」
「おやおや? 九尾様、デジャブですね。以前にもこんなことがあった気が」
「この面子が揃うといつだってこうじゃない」
「ふふ、忍は勘が鋭いぇ。大悪魔をひっとらえたぇ」
「え」
「驚くのも無理ないぇ。1999年にクソにもならぬジジィ共がしたラグナロクもどきのリミックスをすることで世界線を変えたぇ」
「どういうこと? SFすぎてついていけないわよ」
「その作戦で重要人物をひっとらえたということですね? だけど九尾様のことです。私たちにも利益があるということなのでしょう? 私はエリートのなかのエリートですから察します」
「そうだぇ。世界線の変更で賭けごとを遊べるようになったぇ」
「アナタってギャンブル大好きだもの。よかったわね」
「それだけですか?」
「それだけでいいんじゃないの? 町が盛り上がっていくワケだし」
「カジノはこれからできます。そこで九尾様が賭けごとを好きなだけ遊べるようにもなる。それだけが世界線を変えた目的……いや取り分って随分と控えめだと思うのですよ。エリートのなかのエリートは察してしまうのです」
「忍、賭けごとは人間と儂でやってもつまらないぇ。やるなら妖怪同士。人間や狸共からかっぱらった金をしゃぶりつくすぐらい遊んでやるのが儂の流儀だぇ」
「ごめん、何を言っているのだかサッパリだわ」
「ふふ、こういう馬鹿のほうが助かるぇ。だけど忍は鷲の本当の目的に気づいているようだぇ。お前の狙いこそが何だぇ?」
「私は九尾様に仕えて新世界で魔女としての役割を果たしてゆけばいいのです。でも、その新世界のありようを教えてくれたって良かったのでは? エリートのなかのエリートですよ? 信じて貰えないと末廻組はいつでも提携を解消します。お分かりで?」
「ふふ、ふふふ……じゃあ今言ったことが全てだぇ。忠義を尽くせぇ。小池局長」
小池忍、彼女は四国警察トップにして四国魔女組織「末廻組」の局長を務める。中谷との接触は彼女自ら行い関係を進めた。全日本魔女機構でもその関係が噂になっているが、誰も真相に触れようとはしない。
いっぽう板尾は元々CEAの元幹部。しかし舛添と五十嵐の双方と争いごとをおこして組織追放となる。元々人望に薄い野心家で単独行動が多い超能力者だ。彼は彼で舛添が春醒幹部と同盟関係にある事を知って別の春醒幹部と同盟関係を結ぶことにした。その相手が中谷篤子。そのタイミングというタイミングがほぼ小池と同じ。だから「同期の桜」と呼んでいる。
この2人は四国にいる異能者でトップの実力を持っているとされる。しかしてその2人を手下に持つ県知事、中谷篤子は伝説上の妖怪九尾。
彼女は平成の世になってルーカス大芝率いる春醒に召喚されて世に再誕した。当然のように力を持った彼女は妖力で白狐の子分を量産。さらには世に現存する妖怪や逸れ魔女のような異能者を傘下組織につけることで四国の制圧にのりだす。その勢いは1999年の大変革より増した。
近年になって小池忍や板尾敦盛のような強者も側近につける。
この3人に蛮狸のカリスマと謳われた男を加えて四国四天王とする。
「ハックション! くしゃみか? 久しぶりだなぁ……」
野茂重道。しかし彼は九尾との死闘の末に愛媛を去った。
敗北したのだ。決して死にはしない絶対的な強さを持ったもののけに屈して。
彼は失った四国を護る同胞として共に戦った蛮狸の仲間を。
それが秋桜。春醒をよしとしない蛮狸が集った武闘狸組織。
その名が今尚も四天王の名に刻まれるのは秋桜の遺志があるからか。
もっとも当の本人はそれから慰安旅行をするとほざいて全国のメス蛮狸を相手に女遊び三昧をするわけだが――
「萌香ちゃん、コイツを持っていくといい」
重道は愛用している木刀を萌香に手渡した。
「え? いいの? 重道さんの相棒じゃあ?」
「オイラはもう隻腕。剣士なんてモノじゃねぇ。それに死んだことになっている」
「え? 重道さんって死んだの?」
「いや、生きているよ! 生きているけども!」
「こんな物を持っていかなくたっていいよ? 私は素手で戦う!」
「いや、持っていってくれ。トンキチも風太もオイラにまた戦って欲しいぞって言うのだろうから、それはできねぇんだ。気持ちがないワケじゃねぇ。だけどその気持ちをその木刀にのっけられるのは今のオイラじゃかなわねぇ」
「あの……これって」
「お、気づいたか?」
萌香は隠されていた刀身を露わにする。
「仕込み刀」
「そうでぇ」
「ヘヘヘ。かっこいい」
「でも、よほどのことがない限りソレは抜くんじゃないぞ?」
「どういうこと?」
「サムライっていうのはなぁ……護りたい者を護る為だけにそれを振るうのさ。弱い者を殺す為じゃねぇ。だけど……それよりもっと大事なことがある」
「何?」
「自分の命をまず大事にしろ。萌香ちゃんのそれは一緒に喫茶店をやっているコたち全員の願いだ。だからオイラも渡す気になったのさ」
「うん。わかった。ありがとう。重道さん、いってくる」
「死ぬんじゃないぞ。逃げたっていい。逃げたってなぁ」
「私は負けないよ!」
重道は嫌な予感を働かせていた。
林萌香という女の子を止めることは誰にも出来ない。しかしもう一人そういう怪物がいるかもしれないことを――
野茂重道(弥生双吾)が久々登場の巻でした!
実は第1章第27話とあわせて読むと深く楽しめます。深すぎて分かり人にしか分からないかもだけど。
役者はそろいつつあります。そして武器を手にした萌香。ゆくぜ!修羅の国と化した四国へ!
次号(*´ω`*)m9




