第20話「Moeka,This is my way you don't know」
時を遡ること、数週間前。
ソラは怒りのままに東京駅に向かった。
実はその日のうちに萌香と杏奈には追いついていた。
「SNSの更新はしてないか。弁護士と接見するって話していたわね。どこかのホテルにいると思うけど……」
人の流れが凄まじい東京駅。そこで落ち着きなく歩きまわるソラはやがて妙な違和感に気づく。
「いない? 人がいない?」
周囲を見渡す。
聞き馴染みのある口笛。
「アンタ…………」
「アンタって役職はねぇよ。ボスだろうがソラたんよぉ」
「気安く呼ぶな。反吐がでる」
「ふん」
離れた柱の裏から現れたのはCEA総司令官・五十嵐拳志朗。
そこから次々とCEAの隊員と思われる者が現れる。
「チッ……やられた……警戒を怠ってしまった……」
思わずソラの口から弱音もでる。
相手になるのは約100人の超能力者たちだ。各人の実力はどのようなものになるか戦ってみないと分からない。少なくとも戦闘においてソラのそれを遥かに凌駕する五十嵐も含まれる。
「でも、これが私の生きる道。死んでも悔やまない。きなさい!!!」
「馬鹿野郎」
一斉にCEAの隊員たちが襲って来る。
そこで頭上から大量の蛾がCEAの隊員を襲ってきた。ソラを襲おうとした者たちばかりに向けて限定であり、ソラはその奇襲により護られていた。
「ったく! コイツも馬鹿か! 銀山! 俺についてこい!」
急に五十嵐は逃げた。
いや、ついてこい?
突然の状況にソラは戸惑いつつも虫の奇襲が自分を護っている状況から察し、走りだした五十嵐の後を追う。
その空間はもう東京駅でなくなっていた。
「何コレ!? 未来都市か何か!?」
「ぼさっとするな! 早く来い!!」
「答えなさいよ! ボサボサ胞子!」
「ここを抜けだしてからだ!! 美人な黒人のネェちゃん!!」
「ちょっ……何を……」
頬を赤らめるソラ。彼女はその時にスグ背後から怖気を感じた。
「ソラちゃん! また会えたね!! これは運命だ!!!」
「ウゲッ!? 蟲野郎!?」
ソラのすぐ後ろにいたのは高津零。彼女が来日した幼い時から一方的に親密な関係を迫ってくるCEAメンバー。虫を扱う異能者だ。
「ギャアアアァァァアアァァッ!? 来るな!! 来るなぁ!!!」
いやましてソラのダッシュにターボがかかる。
気がつけば五十嵐に追いついていた。
「さすが黒人のアスリートさんだ。早いなぁ」
「会いたくもない野郎がいたの! 必死よ!」
「そこの車に乗れ!!!」
五十嵐が指さした先に旧式の外車があった。
運転手は太った青年の小泉。
ソラは息も絶え絶えに後部座席に座ってドアを閉める。
「馬鹿野郎! いや! すまん! 開けてやれ! 高津だぞ!」
「高津だから嫌なの! おい! デブ! 早く発車しろ!!!」
間もなく高津もソラの隣に座りこんできた。
「ギャアアアァァァアアァァアァッ!? 死ぬぅ!? 死ぬぅ!!!」
「そ! そんなことを言わないでよ! 僕も必死で逃げてきたのに!」
「おい! 小泉!! 発車しやがれ!!!」
「小泉!! いっきまーす!!!」
その車は爆発するように発車した。
『何の真似だ?』
どこからともなく声が脳に響く。この車内からではない。あきらかに超人的な電波を使ったかのような。
「これが俺たちの今後の方針だ」
五十嵐が即答する。
「春醒の野望に従うことはねぇ。野蛮な狸と地獄に堕ちろ。ハゲジジィ」
彼の強気な言葉は何も変わらない。ここに来てソラもやっと状況を掴めてきたようだ。
『貴様……自分が何をしているのか分かっているのだな……』
天の声と言うべきそれはソラの記憶にもある舛添枢のもので間違いないらしい。
「俺たちはCEAを脱退する! あばよ!! ハゲジジィ!!!」
五十嵐がそんな大声を放った時に小泉の運転する車は高速道を走っていた――
「どういうこと……」
「話せば長くなるさ。チョット煙草くれや」
「僕は吸いませんよ」
「すいません。僕も」
「だいぶ前にやめた」
「さすが僕のソラちゃん」
「黙れ。キモムシ野郎が」
「このまま関東から急いで離れろ。落ちついたら話す」
やがてパーキングエリアに入ってから五十嵐は話を始める。
CEAは内部分裂が始まった。それはあの奇妙な仮想現実に移転させられた事から始まる。自分たちはあの仮想現実で芸能界の人間にさせられていたが、その計画はCEAの裏のボスであった舛添もとい春醒の正式なメンバーとなった彼の計画のもとで進められた。その事実を五十嵐は突きとめて反旗を翻すタイミングを探る。
「舛添の命令でアンタを攫えとあった。だが、そのタイミングで俺達は宣戦布告することにしたのさ」
「そう! 僕もこれは運命だと思っていた!」
「春醒とはどのみち戦うことになるぞ? あの蛮狸の娘とつるむならなぁ」
「そうだよ! 今こそ決断のとき!」
「シン・CEAのメンバーとしてアンタを迎えたい! どうだ?」
「もう僕と結婚しよう! ソラちゃん!」
「うるせぇんだよ!!! テメェ!!!」
「あの、おにぎりはどうです? あ、いつもお店に通っています。小泉です」
ソラは溜息をつく。
「高津の提案は却下。あとは全部保留で。私はもう色んなことに疲れたの」
「癒しのマイダーリンに僕ならなれるよ!」
「しつこいんだよ!!! テメェ!!!」
ソラのアッパーが高津の顎をしっかりと捉えた。
「そういや牧野って女はどうしたの? この車内が変な男ばかりでむさ苦しいのだけど?」
「ああ、アイツは人造人間。舛添が作ったな。俺はすぐに諦められたよ」
「そう。でも、私は今自分と運命を共にする仲間と生きるわ」
「そうか。じゃあ今からでもゆっくり考えてくれ。でも、これだけは信じろよ」
「何を?」
「俺たちはお前の敵にはならない。小泉。ここから広島まで安全運転よろしく」
「了解です!! ボス!!」
かくしてソラは独り、広島に帰ってきた。
萌香たちは送られてくるラインをみる限り無事に渡米したらしい。
ソラが東京に向かったのは金庫の金を勝手に盗んだ萌香を怒る為だけでない。
彼女が米国に行ってしまうのを阻止する為であった。
「シン・CEAか」
ドロップアウトにあるリクライニングチェアーで寛ぎながら彼女は独り呟く。
もしも萌香たちがアメリカから帰って来なかったらどうなるのだろうか?
不安がないと言ったら嘘だが、その時はその時なのだろう。
彼女は苦笑いをしてみせて立ち上がる。
萌香たちが帰ってくることを信じて彼女は店の準備を独り進める――
∀・)カモン・ベイベ・アメリカ編♪♪♪最後までのご一読ありがとうございました♪♪♪
アメリカになろうで最もボリュームのある作品になったと思います(それでいて長編の一角ですけど)。この章をより深く楽しみたい御方は拙作「芸能界になろう」とあわせて読んで頂けると良いかもですね。手応えとしてはアメリになろう作品として長編の1章をうまく絡めたらと思って試行錯誤したところがあります。それがうまくいったかどうかは置いといて「楽しかった」とは明記します。何気に公認キャラもスポットも全部登場しましたし。何気にね。ドロップアウトのメンバーたちの個性も明らかにできたかな?個人的には杏奈さんがモデルのなろう作家である悠月星花さまを彷彿とさせており、そこに妙にハマるところは意外とありました(笑)最後に登場したCEAの高津零は幕田卓馬さんと共同で作ったキャラクターになります。
さて、しばらく本作は休載期間に入ります。心配される御方もいらっしゃるかもしれませんが、大事な長編作品にしてゆきたいと思っていますから。次回の更新は明年2026年の1月12日になります。第4章は「四国四天王編」になります。おたのしみに。でゎでゎ。DROPOUTからよいお年をm(*´ω`*)m




