第6話「We go to U.S.A. because we wanna go to U.S.A」
彼らがドロップアウトに因縁をつけてきたのは銀山ソラをアメリカに誘う為。
アメリカのほうでは強力な超能力者の力を求めている。
それは彼らが倒さんとしているモノがあるからだと言う。それが何だか得体のしれない怪物だと言うのだから妙なのは確かだ。
『その怪物を倒そうとしたから、ドロップアウトの2人が貴方達に攫われた?』
『詳しいことは分からない。だが、こういう写真が君らに送られた狙いはある』
『組織とは連絡を取り合ってないの?』
『彼らがアメリカに渡ってからはない』
『………………』
リチャードの話す事はどこか抽象的だ。このような話を受けて大地も賢太郎も海を渡り被害に遭ったのかもしれない。
『じゃあこのまま彼らをほっておいてもいい?』
『そこまでしても彼らはメアリーを諦めない。おそらく刺客を送ってでもして、メアリーをアメリカに誘致させるだろうな』
『ん~最初からそうすればいいのだろうに』
『メアリーは強い。おそらくアンタよりも』
リチャードは嘘をついているようにみえない。拘束の魔法を解いてからというもの、妙にやりとりがしにくい山崎に戸惑いつつも、彼はあくまでメアリーだとするソラのアメリカ誘致にこだわって仕方ない。そして同じテンションで淡々とその交渉を求め続けているのだ。
山崎は例の写真を眺める。
そう言えば。こうして見るとなんだか違和感がある。普段は警察官である彼女だからこそ分かる事だと言えようか。必ずしもそうだと言えないが……。
彼らはスカイツリーの観光にやってきていた。いや、観光にやってきたフリをしていたと言った方が正解な気がするが…………萌香と杏奈は普通に遊びきっていた。溜息をつきながら、山崎は彼女たちへリチャードの話したことを言う。
「ソラたんはアメリカに絶対行かない」
萌香がアッサリと真顔で返す。
「どうしてそうだと言い切れる?」
「ソラたんにとって嫌な思い出しかない故郷。かつて喋れた英語だってまったく喋れなくなる程のだよ? 多くは言わない。それからこういうのはプライバシー侵害でしょ。言っておくけど、私はソラたんを護るためにこうして動いている」
「そうすると?」
「もうっ、イチイチ言わないと分からないのかなぁ」
「いや、私はそこまで出来ない。さすがに急にアメリカで遊びたくて長期休暇をとるなんて……鷹山じゃないし。できない」
「あのオバハンならするのか」
「する。だから大嫌い」
「じゃあ、言わなくても分かるよね?」
「…………そのつもりだっていう事?」
「あたぼう。因縁をつけられたら、殴る。これってマナーでしょ?」
「ふっ、いいけど通訳はつかないよ?」
「英語はあの2人が話せるから大丈夫。ディスマンも味方でしょ?」
「ああ」
萌香のその一言で全てが明らかになる。
どうやら彼女は見抜いているようだ。
「へ~イ、ディスマン! カモンカモン! アンバー領! イテッ!」
リチャードを大声と笑顔で呼びだす杏奈の頭を黒ステッキで叩く。
「アンタも萌香についていくつもり?」
「えっ?」
「ついていくつもりかって聞いている」
「………………」
「言っておくけど、そもそもドロップアウトの密偵の為にアンタはモエカッチョたちの一員になった。それがこうして安易にバレてしまった。これで彼女たちの仲間になりたいっていうのならば、それはもう神泉組としての行動でないよ? どう考えているの?」
山崎の問いはとんでもなくキツいものだ。
でも、杏奈は即答した。
「確かに当初の目的は達成できませんでした。ですが、改めてドロップアウトの一員になった気がするのです。こうして彼女と関わっているうちに。もちろん、私は神泉組です。ハニロズ大ファンです。そしてドロップアウトの一員にだってなった。そんな気がするのです」
「………………」
どうやら悪い方向に向かってはないらしい。
「わかったよ。気をつけて。いってらっしゃい」
杏奈の肩をポンポンと軽く叩き、山崎はどこかへ去った。
翌日、萌香と杏奈そしてリチャードは飛行機のなかに乗っていた。
彼女たちはアメリカに向かう。
大地と賢太郎を迎えに。
「「ヒャッホ~イ!!!」」
大地と賢太郎はニューヨークにあるスケボーパークで遊び尽くしていた――
いや、お前ら遊んでたんかいっ(;^ω^)=3
やっと日本を発ちました。日本語が喋れないリチャード&英語が喋れない萌香と杏奈。
ここから本章、本当の意味で始まってゆきます――




