第22話「テレビ局にみんな集結!みんな変!みんな乱闘!ってどうなのよ!?」
チーム:ジャンヌダルクの飛行船はフジサンテレビ本社へ向かう。
伊達賢太郎を通じて交渉が成立したのだ。
「それでそのフジサンテレビ歌謡祭って番組に向かう訳?」
「そう。そこで萌香の格好した綺羅めくると相対するのよ」
ソラと鷹山が確認を交わす。
「対話って言っているけども、まともに会話してくることはなさそうか」
「戦闘にはなるわ。どう? そのコは戦えそう?」
運転席から山崎と萌香のほうを振り向く。
萌香の表情はもどってきているが、姿は狸のままだ。
「モエカッチョが戦うって言うのは難しそうです。で、現地に向かっている同胞ってどれぐらいだと思います?」
「分からない。でも大魔女様の言葉を信じるならば、全国9部隊のうち大多数は臨めそうじゃない?」
「ババァは楽観だな」
「突然敬語を抜くのをやめろ」
「そもそも大魔女様が元の現実世界の次元で話しているとも限らない。この世界じゃ全国9部隊が1部隊になっているのかも」
「それはない」
「何で分かる」
「伊東と会った」
「え」
「別の次元だったかな。『はつと鵺』のドラマの世界で助けてくれた。そこで私も魔女としての自分を思いだせた」
「伊東って暫く定例会にも顔をださない2番隊の」
「私たちが心配するほど神泉組は弱くない。魔女機構だってね」
「ふふっ、部外者がいるのに情報ダダ漏れよ?」
腕をずっと組んでいるソラが溜息まじりに微笑む。
彼女はその視線を萌香に向けた。
「どう? 一緒に動けそう?」
「うん、大丈夫。いざとなったら走って逃げるよ」
「速そうね」
「私は狸だ。馬鹿にするな」
「うまいことを言う」
落ち込んでいた萌香はやっと気持ちを取り戻してきたようだ。
「それで魔女さんたち、目的は今から向かう場所で戦うって事でいい?」
「ええ。チーム:ジャンヌダルクは最初からそれが目的。でも萌香、萌香に1つ聞いてもいいかしら?」
「何?」
「あなたがこの変な世界から還るところがあるとして、それはどういうところ?」
萌香はポカンとする。
思ってもみない質問が飛んできたからだ。
でも、その答えに迷うことはない。
「いつもどおり、ソラたんと髭モジャリンとあの喫茶店で働く毎日。変な魔女やエスパーのお客さんが来てもソレが日常だって感じられるあの店」
彼女はやっと微笑む。
「ドロップアウトだよ」
そこでソラは目を丸くする。
萌香が元の人間の姿に戻ったのだ。目を紅く光らせて――
「目的地へ到着するよ。各人準備はいい?」
「えっ!? いいけど!? このタイミングゥ!?」
フジサンテレビ歌謡祭は予定どおりに始まった。人気ラッパーのハンソックのパフォーマンスからメガネ愛にXYZ48と続く。でも最大の見せ場であるのは綺羅めくるとジストペリドンの登場。そこでサプライズとして蒼月しずくが綺羅めくるのペットであるモエエまた倉木理亜奈と現れる事だ。
フジサンテレビ本社前はたくさんのマスコミや観衆などでごったがえしていた。
まさか彼らのうち誰一人として想像してなどなかった。
蒼月しずく達一派が空から現れるなんて――
「うわぁぁあぁあぁあああああぁぁああぁああああああぁあああ!?」
萌香の叫び声が空から地へと響く。
彼女はソラにしがみついていた。
その姿は狸であった。
彼女達は消失した飛行船からフジサンテレビ本社屋上へとダイビングしていた。着地は鷹山の魔法で衝突を無力化する算段。しかし思わぬ展開が。
「ウチの看板タレントを還して貰うぞぉ!!!」
フジサンテレビ屋上から超人的な飛翔で五十嵐拳志朗が襲ってきた。
「ボス!? こんなタイミングで!?」
動じるソラ。しかし同じくして地上から超人的な飛翔をしてみせた一人の魔女が五十嵐の猛攻を止める。
「ごめんね。ただのファンって設定じゃ私は納得できないの!」
「何だぁ!? 貴様ァ!?」
「愛の狩人」
他にも五十嵐の仲間と思える黒服の連中が地上から光線を放ってくる。そんな攻撃に応じることで着地の魔法が発動する事ができないと思えた。しかし萌香達を援護するのは神泉組局長・千速香澄だけでなかった。
「魔法!! 滝っす!!!」
大きな滝水が萌香たちを襲わんとする光線を妨げる。
「にゃ~☆ きゅうしゅう~☆」
巨大な魔法陣がビーム光線を吸いこんでゆく。
ボワンッ!
萌香たちはフジサンテレビ屋上に着地。そこに巨大モフモフ猫がボンと現れて萌香達をキャッチ。
「クッ……可愛い。ずっとモフりたい……」
思わず呟くソラだったが「私もなかなかセンスあるでしょうが」という鷹山の言葉に「チョット思っただけよ!」と返してみせる。
しかし、そこには更なる敵が待ち構えていた。
「あら? 強敵がたくさん。牧野が本気になるかもです」
五十嵐直属の部下、牧野が立ちはだかる。
すぐさま魔法攻撃を繰りだす鷹山と山崎だったが、彼女の手刀一振りで無効化されてしまう。萌香はモエエと化してビクビク怯える始末。ソラはそんな彼女を抱きかかえており戦闘は実質不能だ。万事休したか――
フジサンテレビ歌謡祭のホールではRiser☆Sの壱星とRYU―SAYのリュウヤのコラボ曲が披露。その歌が終わってスタッフがカンペをだす。
「フリートークで10分?」
思わず呟くリュウヤ。
「あっはっは。何を話しましょうか? リュウヤさん」
「いや……」
ゆっくりとそのクライマックスは近づく。