第20話「本当のことってなかなか話せないものだから人は嘘をつく」
ラグナロク。それは作戦名であった――
テレビやラジオの電波をロックして仮想現実を人類にみせる。
仮想現実に囚われた人類は現実で昏睡状態になる。
多くの人間がこの状態になった世界を「終わった世界」とする。
しかし人類はそれを「終わった世界」でなく「始まった世界」だと認識する。幾万幾億とある世界線のなかで「始まった世界」が「真実の世界」だという事になるのだ。「真実の世界」で生きている人間は永遠に閉じこめられた操り人形に他ならない。
完璧な神話がこうしてできる。
しかし、それは為されなかった。
虚無の世界を創ろうとした狸の野望は志を違えた狸に止められる。
幕田は目をとじて天を仰ぐ。
「萌香の母親、芳香は春醒の一員だった」
「春醒……」
「君は春醒を知っているのか?」
「0部隊時代に聞いた事はある」
「そうか、その頃には組織が壊滅した筈なのだが」
「1999年、まだ私がアメリカにいた時に日本を滅ぼそうとしたと」
「滅ぼすとは違うな。自分たちのものにして支配する。これが正解だよ」
「それで? それが萌香とお母さんとで決裂する理由になったの?」
ソラは真剣に幕田と向き合う。
「わかりやすく言えば。だが、彼女と母親が何故“決闘”することになったのかというのは分かっていない。分かっているのはその時に春醒の大元ルーカスって男と接触が確かにあったっていう事実だな」
「…………ちょっと聞いてもいいかしら?」
「何だ?」
「あなたは春醒だったの?」
「…………」
幕田は細くした目を閉じて少し間をおいた。しかし即答に近い形で答える。
「今は春醒じゃあない。人間が大好きな1匹の蛮狸で科学者であり医者だ。それ以上は何も答えられないな」
ソラは「そう」とため息をつき、それ以上は問わなかった。
「それで? この異常現象は何なの? 春醒の残党がやっているの?」
もっとも聞きたい事はそこ。
「推察に過ぎないが春醒の残党が再び徒党を組んで何かを企んだとしても、ここまでの事をやってのけるとは想定しがたい。おそらくは凶悪にして強大な何かが蛮狸、超能力者、魔女を含めた人類に対しておこなっている事だとしか思えん」
「じゃあ、気になるのはこの春醒の大元ね」
「ルーカスか」
「ええ。そのルーカスっていうのは本名? コードネーム?」
「ああ、今更な話だが国民的スーパースターのそのままだよ」
「えっ!? まさか!?」
「驚くような話かもなぁ」
ソラのそのまさかが当たっていた。
『トゥギャザーしようよ♡』
その男、ルーカス大芝と名乗る芸能界の大御所――
∀・)トゥギャザーしようぜ!をそのまま使わなかった僕を許してくれい(笑)
∀・)また来週も月曜日21時~をお楽しみに☆☆☆彡




