第19話「熱烈すぎる奴はキモい奴にもなりうるから注意」
フジサンテレビ、40代半ばにして下働きADの男がいた。
「伊達! 遅いぞ!」
「はっ! はいっ!! すいません!!!」
伊達賢太郎。音楽番組などを手掛ける制作会社の一社員だ。
フジサンテレビの恒例行事にして風物詩とも名高い「フジサンテレビ歌謡祭」の裏方に徹する彼であったが、たまたまその電話にでる事になった。
「もしもし?」
『もしもし。蒼月です』
「えぇ!? やばい!! 嬉しい!! 漏らしちゃいそう!!」
『あぁ~えっと~伊達賢太郎君の電話番号で間違いないかしら?』
「そ、そうですけど……一体何の用でお電話を!? 僕と遂にお食事に!?」
『その音楽番組にいったら、私を無罪放免にしてくれるって話は本当なの?』
「いや、それは綺羅さんに聞いてみないと……」
『分からない? 貴方が橋渡しになってくれる訳にはいかないのかな?』
「重責ですよ……僕みたいな底辺ADには……」
『でも、やってくれたら今度お食事いいわよ?』
「え? えぇ!? マジですかぁ!? やったぁ!!」
『うん。もう芸能界を辞めるしさ……君ならいいと思って』
「で、でも、でもでも、具体的に僕はどうしたらぁ……」
『この事を内密に綺羅さんへ伝えて。可能なら湊君にも』
「ジストペリドンは難しいですよ。ガードが高すぎるし、僕だと彼らの事務所の関係者としか話せない……それで精一杯です。綺羅さんだけでもお食事の件を認めてくださいよぉ……」
『そう……』
「それに何かに匿われているっていうか、彼の周りには綺羅さん以上にボディーガードのような付き人まで複数つけていて」
『ふうん、警護されるべきは綺羅めくるの筈なのにねぇ』
「事情はよく分からないですよ。でも、でもでも、僕がうまくやったら、お食事お願いしますよ……!!」
『ハイハイ。じゃ綺羅さんに宜しく」
飛行船の運転席に座りながら鷹山は電話を掛けていた。
「キモッ!」
電話を切ったと同時に彼女は思わず呟く。
「どうやらメモに書いてあったとおりで、このADさんって蒼月しずくの熱心なファンのようですね。よかったじゃないですか。愛してくれる人がいて」
「お前が私の替わりにやれよ!! あんなひ弱そうにデレデレする男なんて私は怖気しかしないわ!!」
山崎はイライラする鷹山をみてケラケラ笑った後に萌香の方へ視線を移す。
彼女はひどく落ち込んでいた。
事実を話したからではない。
実は大好きな存在である兄が囚われているということを知って。
傍には彼女と親しいソラがついているが、それでも充分でないと考えられた。
咄嗟にスティックを振って彼女を凍らす。ソラは「何をするの!?」と怒鳴る。すぐに懐からスマホをとりだし、怒り心頭の彼女へみせた。
画面に写るのは萌香と家族同然の幕田帳。
『萌香はまだ狸のままなのか?』
「えっ?」
『例の蛮狸のことを知らない魔女さんは離れた席にいるようだな』
「ええ……まぁ……」
『萌香のことを救いたいなら私の話を聞いてくれるか?』
「救う?」
『この異常事態を生んだ連中。そしてそれを打破する為の話だ』
「全て分かっているっていうの?」
『ああ、このままだと彼女は死ぬ。殺されて。そして世界は閉ざされる』
「えっ!?」
『話を聞いてくれ。私たちのことを仲間だと思って』
それはもう数年前から何十年も前の話に遡る――
∀・)次回で明かされます。
A・)何がって?
∀・)それは読んでみてのおたのしみ☆☆☆彡
∀・)また来週月曜日21時に☆☆☆彡




