第14話「人気芸能人になって人類を救うなんて話がありましたっけ?」
萌香と鷹山はリッチな構想マンション一室で山崎から説明を受けていた。
「なんか記憶が曖昧だけど、さっき幕田先生がココにいた?」
「幕田先生って誰?」
「同じ化け狸の医者やっているオッサン」
「オッサンって尊敬の欠片もない呼び方」
「夢をみていたとかじゃないかな……2人とも今日は撮影で大忙しで。此処に来たら速攻でバタンキューだったし?」
「う~ん」
この2人を相手にこれからやる事を伝えてゆくのは骨が折れる作業だ。
「つまりハルサメって奴らが日本中の人々を仮想空間に連れて行ったと?」
山崎は幕田と最後に確認しあった。まず彼からその事実を教えて貰ったこと、それからこのチームの中心人物として彼がいることを内密にするということを。
ただ仮想現実につれていかれたという実感はあるようだ。これまでどの世界にいっても、その世界に囚われる事なく現実の世界へ帰ろうと2人は成功しそうになっている。
「ただ緊急的な問題はいくつかあります」
「緊急的な問題?」
「モエカッチョが狸から人間の姿に戻れないこと」
「あ、そういえば」
「大丈夫よ? 山崎、このコはこの形態のほうがメチャクチャ強いから」
「それがそうじゃないっぽいのです」
「えっ?」
山崎のステッキ一振りで萌香は凍りついた。
鷹山はすぐに「もう、面倒な事をするね」と萌香の解凍をその場でする。
「普段のモエカッチョなら目を赤くして今の一振りも防げた」
「確かに」
「戦闘力がまるでない。日本語を喋る狸タレントとしてなら有能だろうけど」
「春醒と戦闘になったら、私と山崎で対抗するしかないっていうことね……」
「まだ手はある筈です」
「あ」
「何か思いついたの?」
「いや、さっきテレビにソラたんとお兄ちゃんが映っていたなって」
「そう、この仮想空間にいる味方になれそうな人たちにあたってゆく。この世界の記憶から現実の記憶を取り戻すのがどれだけ大変か分からないけど」
「じゃあ、ソラたんのところにいこうよ!!」
「ん? 何で?」
「そりゃソラたんと私がマブダチだから!!」
「違うね。もふもふ王国が目当てでしょうが」
「ぐっ……」
「図星かよ」
しかし何とか話はまとまった。
この翌日、蒼月しずくは一切の芸能活動を休止すると発表した。業界は騒然。当然のように繋がりがあるテレビ局など関係各所から連絡が。
「早速クリスタル・エデンとアポを取りましたよ」
「よっし! のりこもう!」
雌狸のモエエ、なんか蒼月しずくじゃない蒼月しずく、グルグル眼鏡をかけた山崎生吹。芸能人からのドロップアウト勢がクリスタル・エデン本社を目指す。
クリスタル・エデン本社。それは都内の中心部に経つ大手企業の本社と並んで建つ立派な高層ビルであった――
道中で有名タレントから声をかけられることがあったが、誰なのかがサッパリ分からない者も多い。この世界では有名人でない人間が有名人となっている模様。
「気をつけてください。この世界の芸能界のドンは伊達賢治じゃないですよ?」
「ええ、とんだ野郎がとんだポジションにいたものね」
「どうしたらいいの? 噛みついたらいいの?」
「駄目。まずはソラさんと会えるように話すの」
エレベーターに乗りながら東京の景色を一望。
そんな贅沢を味わいつつも最上階の社長室へ。
「社長。蒼月しずく様ご一行がやってきましたと牧野が教えます」
「おぉ~ありがとう。まぁきぃのくぅん。骨が折れそうだねぇ~」
クリスタル・エデン社長。五十嵐拳志郎。
その秘書兼マネージャー。牧野絵里。
「あおつぅきくぅん、突然に芸能界をやめるってどういう事なのかい?」
「色々ありまして。ただ、今日は1つお願いしたい事があってきました」
「お願い?」
「銀山ソラ……倉木理亜奈さんと会わせてください」
「理由は?」
「モエエが話したがっていまして」
「ソラたんと! いや! リアたんと話したくて! ウヒ! ウヒヒヒッ!」
「そうかぁ。それで? そこの狸はいつからアンタのペットになったのよ?」
「ペットなんかになってねぇよ!! こんなダサいオバサンの!!」
「一言余計だよ。アンタも」
「そうか、アンタらは今朝から蒼月しずくの事ともう1つ世間を大層に賑わしているニュースがあるというのを知らないのか?」
「もう1つのニュース?」
「まぁきぃのぉくぅん! テレビをつけちゃって!」
「ボスに命令されたので牧野は仕方なくテレビをつけます!」
巨大なスクリーンに映し出されているのはあるニュースで騒ぐワイドショーだ。
「はい……私の……私の大事な家族で……」
インタビューに涙ながら応えているのは人気アイドルの綺羅めくる。
林萌香そのものの姿であった――
∀・)いやぁ~なんていう場面で終わるのでしょう(笑)そう、この展開があるから僕は劇団になろうフェスをしながら第2章は書きたくなかったのね(笑)混乱するだけだからね(笑)でも、この第2章の世界はそもそもが「仮想空間」にして「仮想現実」という事。林萌香ソックリの綺羅めくるとなった女は誰なのか?ヒントを言うとこの第2章で既に登場したアイツです。あ、わかっちゃった?次号☆☆☆彡




