第9話「幕田帳の大冒険」
幕田帳は小さな物小屋で目を覚ました。
サスペンダーの身なりで机に伏せて寝ていたらしい。
いや、サスペンダーがどうとかではない。
彼の髪の毛がすっかり白髪になっていることが可笑しい。
身に覚えのない小屋のなかにいる事が可笑しい。
普段ならば彼は地下に造った研究室のなかで過ごしているからだ。
と、あれこれ考える間もなく正面の扉が開く。
眩い光とともに小さな女の子が彼の目の前に現れた。
「おじいさん、どうして私を殺したの?」
それは幼き牧野夕奈――
彼は山小屋から現代にある普通の部屋のなかにいた。
この部屋のなかで倒れていたらしい。
目の前には仏壇と遺影が。
「幕田さん」
声がしたので振り返る。そこには遺影に写っているはずの牧野夕奈の姿。彼女が生きたままの姿で彼の前に現れたのだ。
「どういうことだ? 君は死んだ筈じゃ」
周りを見渡す。するとまたその景色は変わる。
気がつけば幕田は幼き少年になっていた。
古きよき時代のパチンコ屋の駐車場。そこで風船を作る爺さん。彼はその名を「神様」と言っていた。
「はい、とばりくん、不思議なボールを君にあげよう」
彼は神様から「不思議なボール」という風船を受けとる。
そしてまた景色は一変する。
今度は学校だ。その学校で殺人事件が起きた。しかしそれは謎のまま葬られてしまう。彼はそこで知る。殺されたクラスメイトが自分と同じ同胞である事を。
「蛮狸」
その言葉と向き合わせたいのか?
彼は気がつけばカマキリのような禍々しい巨大生物になっていた。
同じような生物がすぐそこに。
「幕田さん? 幕田さんなの?」
この声は牧野夕奈の声。
形状が少し違う事から同じ生物の雌といったところだろうか? 遠く離れた所にはニタニタ笑う舛添要と老人の姿が――
「牧野さん、これは……栗須帳の作品じゃないか? 最初は夢学無岳だったけど」
「何を言っているの!? 私たち、こんな化け物の姿にさせられているのよ!?」
いや、それは分かっている。しかし、冷静に考えると今起きている現象自体が現実的でないのだ。何かが起きている。幕田は遠くにみえる舛添たちに向かって喉を張り上げるように叫んだ――
「マスゾェ!!! 栗須帳原作の最高のテレビドラマと言ったら伊達賢治主演の『悪魔と初恋』じゃねぇかボケェ!!!」
遠くにいる舛添は驚いた顏をみせる。
そして彼は目のまえにいた。
「何!? どうしてこのメタバリアを突破した!?」
幕田は魔法で作られた縄に縛られていた
「貴様、今ここで何をしている」
「ふふふ、でも拘束は解けないようだなぁ。お前の大好きな栗須帳原作のテレビドラマを再現した訳だが」
「だから最高傑作は『悪魔の初恋』だっていっているだろうが。ノゾミ役の蒼月しずくがたまらなかったんだよ! コンチクショー! じゃないわ! この私をこんなふうに拘束して……いや、待て。この今見える空間そのものが仮想空間としたら……」
「なっ! なななな、何を言っている!?」
幕田は目を光らす。
「私も蛮狸だ。お前達のような派生のザクとは違うのだよ。ザクとは!!!」
「待て! この画期的な発明を今からお前に話す!!」
「お前の話は長いんだよ!!! このハゲ野郎!!!」
幕田の恫喝とともに縄は解けた。そして彼は現実に還った。
そこで彼は目にする。
いま、地球上にいる誰もがこん睡状態に陥っていることを――
∀・)はい。本章の真相に近づいて参りました。また次号。
夢学無岳様
『ハンスじいさんの最後』
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栗須帳様
『ずっとずっと』
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栗須帳様
『ふうせん』
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栗須帳様
『その少女、闇に魅入られて』
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栗須帳様
『少女ミサキの冒険譚 〜今日も明日も生きてやる~』
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栗須帳様
『悪魔の初恋』
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∀・)こちらの作品に登場して貰いました☆☆☆彡