第1話「地獄の喫茶店より地獄の世界へ」
萌香がドロップアウトで働くようになって1年が経つ。
魔女の一団なる神泉組は暴力団員にして人外である五味秀一をマークしていたが、いつの間にか林萌香をはじめとする蛮狸と銀山ソラをはじめとするCEAに着目を置くように。局長である千速香澄は萌香の兄である林海斗をマジで彼氏にせんと開店するたびに通うようになった。その後輩たちはそんな彼女に便乗して通うようになったのだが、副長である鷹山優は彼女たち全員を何とか戒めようとしていた。
「ねぇ。そもそも何で私たちってこの店の常連になったと思う?」
鷹山は煙草を吹かしながら、向かいに座る1番隊隊長の山崎生吹に語りかける。山崎はコービーを啜って答える。
「そりゃあ副長があの金髪ホモと局長のキューピットになったからでしょう? マジでウザいよ。マジでもうチョットで婚姻届を渡せれそうだったのに」
「バズーカを構えるな。あと私が2人の仲介人になった話なんてなかった」
「でも、いよいよあのお兄さん、地元に帰るそうで」
「え?」
「まぁ~それで局長が四国についていくようならマジで神泉組は可笑しい集いになったって事でしょう。でも、私は違うと思います」
「そうなの?」
「副長はヘタレなのですよ。私はいつだって超情熱的な局長の理解者だから理解しているけど、この店で働くモエカッチョがただの人外じゃないってことを局長なりに把握して内偵しているってことかと。そうじゃないと…………やってられねぇよ! ビール! おかわり!」
「どこまで真面目に聞いたらいいか分からないよね。山崎の話ってさ。でも、海斗君が地元に帰るって話はどこから聞いたの?」
「アイツらから」
山崎はおかわりのビールを飲みながら後輩の未来屋たまと七空いとを指さす。
「「はい! はい!! はい!!! 一気! 一気!! 一気!!! 超能力者のデブ!!!」」
神泉組と同じくドロップアウトの密偵に入っているCEAの小泉という小柄で大太りの男が店の常連と化していた。いつの間にか未来屋たちと仲良くなった。それも作戦のうちなのかもしれないが、なんとも滑稽な光景だ。
「もう食べられないよぉ~」
小泉が未来屋と七空から一気食いを強制的にさせられている。おまけにスマホで撮られてもいた。
「地獄の喫茶店ね」
「そんなすまし顔で言わないでください。ああやって蛮狸とCEAの潜入捜査をしてくれているのかもしれないのに」
「バンリ?」
「あれ? 副長は知らないのですか? まさかそこまでヘタレだとは」
「一言余計なの。お前は。何だよ? バンリって?」
「化け狸の総称です。もう何十年も前から地球にいますよ? 私達みたいに組織づくりをする奴らではないですが」
「それだと一応妖怪に分類されるのかな? 化け狸が魔女機構から警戒された話なんてなかったものね」
「その化け狸がCEAを完膚なく倒したのだとしたら、大事です。仲良くできるのであれば仲良くするべきだし、可能な限り懐に入った方がいいに決まっている。副長も未来屋たちを見習ってモエカッチョと仲良くしたらどうです?」
「ん……私がなぜバンリをよく知ってないのかが気になる」
「この堅物。とっとと副長の座を私に譲りやがれ」
「一言余計だ。この目の隈不健康野郎」
そこで千速が「うわ~ん! 今日も海斗君が相手してくれなぁい!」と大声で喚きだす。彼女の頬はピンクというより真っ赤だった。
「とっとと帰りやがれ。変態魔女集団」
「今日も世話になったね。また来るよ」
「今度からイブチョの一人だけが来て」
「チャットGDPに相談して考えとく」
「うん、それなら歓迎するからね~」
「いや、何でアンタたち仲いいのよ」
山崎が勘定を終える。萌香と彼女は結構仲の良い友達になっているようだ。
酔いつぶれた千速を未来屋と七空の2人で介抱する。
店からでるとそれはもう別世界だった――
「これは……」
彼女たち5人は荒廃した横川町に立ち尽くしていた――
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