第32 話「私はストーカーじゃない!愛の狩人だ!」
ソラの運転するバイクの後部座席に乗って今日も引っ越し屋の職場へ。
今日はなんだか眠たい。深夜遅くにもふもふ王国が出演する番組があったからだ。予約録画をしたものの、昨晩はそれが気になって寝つけなかった。その結果みてしまったのだ。そして寝不足で起きてしまったのだ――
「今日は狸になってなくて助かったわよ」
「もう慣れたからね~」
「大串さんも気にしていたけども、萌香、体調悪い?」
「え? いや特にそんな事は~」
「なんか怠そうっていうかさぁ」
休憩時間にソラから心配された。女上司の大串からは退勤を勧められたりもしたが、萌香にとってこの仕事も大事な収入源である為に張り切って働くほかに選択肢はなかった。
その結果。帰宅してからすぐに炬燵に入ってバタンキュー。
無理が祟った。
目を覚ますと。それはまだ夢のなかのようだった。
自分といっしょの炬燵に入って蜜柑とせんべいを頬張る女。
「は?」
思わず声がでる。
「やぁ。愛しの妹君よ。愛の狩人だ」
「アンタは…………」
いつかのボクシングジムでブッ飛ばしてやった魔女の女がそこにいた――
「ストーカーババァ!? 何でアンタがウチにいるの!?」
「おいおい、そんな酷い言い方はないじゃないか。妹君よ」
「誰が妹じゃい!! どうやって入ってきた!?」
「アタシは魔女。それも日本屈指の一人だ。萌香ちゃんに触れて、いつでも萌香ちゃんが困った時に駆けつけられるようにマーキングをつけてあげたの♡」
振り返ると頭上に光り輝く魔法陣が浮かぶ。そしてそれは萌香の腕にも。
「何コレ!?」
「アナタにぶん殴られた時にアタシがカウンターを一瞬放った。かすった程度であっても、アタシほどの魔女であればそれぐらい朝飯前で出来る」
「何よ! 何するつもりなの!!」
「交渉しようじゃないか」
「交渉?」
「アタシがマーキングをつけたのは何もアナタだけじゃない。ダーリン候補の彼にも当然つけている。だから彼の家にも簡単に行けた」
ゴクリ……と息を飲む。この場でこの女が何をしてくるか分からない。しかし、次の瞬間に女がみせた顏はまさに女がみせる顏そのものだった。
「でも!! いやあああああ!! だってだって!! メッチャ怖いよぉ!! 何なの!! 何であんな血塗れのお家に住んでいるの!? 殺し屋でもしているっていうの!? でもでもぉ、アタシィ、一度惚れた男の事を諦めることなんて日本一の魔女として出来ないっていうか、そういうので怖がって逃げちゃう女に見えたら理想的な年上の彼女になれないっていうかぁ!! 魔女の生業と恋する乙女ではキャラ分けしていてぇ!! 恋する乙女モードだとあんな空気に絶えられないのよぉ!! ねぇねぇ相談にのってよぉ!! ねぇねぇ聞いているぅ!?」
日本一の魔女を自称する魔女が萌香に涙を浮かべて頬を紅く染め抱きつく。
「はぁ」
彼女は構えていたが、拍子抜けした。
何とか対応しきれそうだ。とりあえず「力になってあげるから離して」と冷静になって済ませる事にした――
∀・)千速さん、可愛い魔女ですよ(笑)作者的には(笑)また次号でお会いしましょう☆☆☆彡




