第31話「パチンコを並んで打って育む絆もある」
五十嵐拳志朗たちは横川にあるラーメン屋をあとにして路地裏の電柱前で立ち止まった。
「ここが待ち合わせ場所だと牧野が教えます」
牧野がそこでそう言った。まだ合流する予定の新入りは来てない。
五十嵐は腕時計をみる。予定の時刻丁度だ。
そこで後ろから猛烈な気配を彼は感じとった。
咄嗟に構える。目に見えたのは猛烈な猛ダッシュでこっちに向かって来る小太りの男。
いや小太りどころじゃない。大太りだ。ただ背丈は五十嵐よりいくらも小さい。
「す、す、す、す、す、すいませぇん!!! 1分遅刻しましたぁ!!! 小泉一基でぇす!!!」
「声がでけぇよぉ!!!!!!」
五十嵐は思わず強烈なキックでツッコミを入れる。
「す、す、す、す、す、すいませぇん……行きつけのレストランのハンバーグが美味くておかわり3杯いっちゃいましたぁ……」
「なるほど。それでそういう体型なのですねと牧野は納得」
「いや、普通じゃねぇだろう。まったく……どういうつもりであの禿げはコイツをよこしたっていうのよ……」
「ここで話すのもなんだから場所をかえようやとテメェに牧野は指図します」
「お前が指図する立場でもねぇだろうが……そうだなぁ。お前は打つことができるか?」
「打つ?」
「パチンコだよ。そこで打ちながら色々話でもしようや」
「自分、パチンコなんてやったことないけど、教えて貰えますか?」
「わかりました。牧野が懇切丁寧に教えてあげますよと優しさをみせます」
「なんだよ。コイツら…………」
五十嵐たちはそのまま最寄りのパチンコ店に入り、パチンコに耽る。
もっともコレは五十嵐の趣味であり、それを牧野の教えたものである。
それが今度は牧野が小泉に教えているという事で何とも滑稽な話だ。
が、問題はそこじゃなくて小泉は妙に当たりまくり、五十嵐たちを差し置いて夢中になりだしたのだ。牧野もまたそうだったなと打ち合わせも何もできないまま苦笑いをして彼は溜息をつく。
彼らは何時間も店のなかにいた。
五十嵐は細心の注意を払って誰かが自分達をつけてないか力を発動させたが、この店のなかにいるのはこのパチンコ店に関わっている人間のみらしい。
店をでる時になって彼は小泉とようやく目と目を合わして向き合った。
「お前がどこの組に所属していたのか、どういう奴なのか、裏ボスからは全く聞いていない。ひとまず俺たちがアジトにしている場所までついてこい。そこで色々聞かして貰う。いいな」
「はい! パチンコを打たせてもらい、ありがとうございました!楽しかったです!」
「なかなかイイ線していたよと牧野は評価をします」
五十嵐は「全くコイツらは」とため息をつきながら缶コーヒーを口にする。
そして彼らは彼らのアジトへ向かった――
∀・)僕はパチンコをうったことなんてないのですけどね。また次号。