第30話「人は見かけによらない。狸も見かけによらない」
「あ!!! その女は!!!」
萌香は思わず大声をあげて指さした。
「あれ? 何だっけ? 思い出せないや。クレープ屋の店員?」
「確かにこういう感じの店員さんっているかもしれないわね?」
ソラは冷たい流し目を幕田に向ける。そんな筈がないのだ。
「どうやら君たちの2人にコイツの記憶があるようだ。銀山君、特に君には」
「貴方が製造しているっていう事は世にたくさん、彼女が出回っているのね」
「いや、それはどうかな。コイツを造るには並大抵の知識じゃまず不可能。おそらく舛添と私にしかできない芸当だよ。少なくとも私が造ったコイツはまだロクに動くこともできない。言わばマネキンのような物だ。しかしアイツにそのような趣味があれば、今頃クレープ屋で働いているかもしれないなぁ」
幕田は顎に手を添えて考えだした。
「いや、そういう問題じゃないでしょ。CEAが造っている人造人間を造れるヤツが2人もいるってことが一大事でしょ!? 貴方は、いや、貴方たちは私達と戦争したいっていうの!?」
「私たち?」
「CEAのことよ!」
「そうだろうが、離別したのであればそう言わない気が……」
「細かい事はいいわ! 牧野を造った理由をいいなさい!!」
「CEA自体に問題はないよ。私が問題だと思っているのは舛添ただ一人だ」
「舛添ただ一人…………?」
「それに誤解をしているようだな。我々蛮狸は確かに君たち人類を襲った歴史があるかもしれない。しかし、それは総意の攻撃でなかった筈だ。蛮狸にも地球に住む人類と手を組み生活を豊かにしたい者と人類を制圧し思うままに支配したい者といる。私や萌香をみて君は私と萌香がどっちだと思う?」
「え……」
「誤解を与えてしまっているようなら申し訳ないが、我々は前者だ。君たち人類を支配したいなんて思ってはいない。むしろ共存できないかと一生懸命考えている。そこのプログラムをよくみてくれ」
PCに映し出されているのは。ラーメンを作ろうとしている牧野の姿が映る動画。
「私はあの美味しいラーメンを再現できる店をもう1つ作ろうと計画しているよ。このイメージではなかなかうまくいってないようだが、夢を諦める気はしない。いっぽうで舛添はどうだ? 君の知っている牧野はそんな事をする為に造られた物だと思うか? よく考えてくれ。君が舛添達から教わった蛮狸と君が目の前にしている蛮狸は全然違うものだ。どうか萌香と友達になって知ってくれ」
「………………わかった」
萌香は動かない牧野の模造品を背負って歩きまわって遊んでいた。
「子供かよ」
ソラは溜息をつき、萌香に優しい笑みを向けた。
その頃、幕田と萌香たちがいたラーメン屋に彼らが来ていた。
「まぁきぃのくん、ここの店のヤツが確かに美味いなぁ」
「せっかく美味しいラーメンを食べているのに静かにしろと牧野は怒っています」
「それはそうと例の後輩は此処に来るって?」
「いえ。この近くです。ちゃんと話を聞きやがれこの野郎と牧野は説明を致します」
「わかったよ。あんちゃん。勘定なぁ」
「あいよー」
彼らは彼らで動いていた。萌香たちの正体を暴く為に――
∀・)サブタイトルを気に入っております。また次号。