第29話「この幕田ってオッサン、何者なの?」
幕田の処方してくれた薬は効き目がすごかった。
鼻水も喉の痛みも嘘のようにとれてしまった。
思わず「よくない副作用があるのじゃないの?」と幕田に尋ねるソラだったが、幕田はあっけらかんとしていた。彼女達は幕田の勧めるラーメン屋に来てラーメンを食していた。
「う~ま~い!」
「このコはこんな感じで呑気だからいいけども、あなたたちの特殊性が世にバレるのでは?」
「ふふん、それを言うならば君もそうだろう? このラーメンが美味すぎて我を失っているな?」
「馬鹿にしないでよ! た、たしかに美味いけども……」
聞けばこのラーメン屋の店員も店主も蛮狸のようだ。
ここまで世間に蛮狸は入ってきている。貴重と言われる超能力者に比べてその数は多いのに違いない。
が、その優秀さがときに違和感となって正体の吐露に繋がるものではないのだろうか?
勘定を済ませて改めてその疑問を幕田にぶつける。
そこでやっと彼は答えた。
「だから君だってそうだろう? CEAの一員である事が知られている訳だ。少なくともこの私には」
「!?」
「安心したまえ。萌香からはちゃんと事情は聞いている。君がCEAのスパイでここに来た訳でない事も彼女からよく聞いているよ。だから私から願いたいことも1つだ」
幕田は真顔になっていた。その彼が誘うまま横川の路地裏へ。そして謎の地下道へと向かう――
その地下室は何かの研究施設のようだった。
「これは」
「見覚えがあるかい?」
ソラは目を丸くした。その施設が一般的なものと考えられないものだからではない。
彼女が今よりもまだ若い時にみた事がある景色そのものだったからだ。
「貴方は舛添と関係した事がある人?」
「人ではなく狸といったほうが正解だ」
萌香はそこらに散らばっているガラクタを好奇心旺盛に弄って遊んでいる。
「子供か! じゃなくて! 蛮狸である貴方が何で舛添と活動をしていたの!?」
「こっちも聞きたいな。現在も繋がっている筈のCEA最高責任者を呼び捨てにできるのか?」
「それは…………」
「うむ。君は本当にあそこを抜け出してきた女の子らしい。安心しろ。私も同じだ」
「CEAに潜入していたということ?」
「察しがいいな。元々我々がこの星に入ってきたのは1980年頃のおはなし」
「春雨」
「お! よく知っているなぁ!」
「舛添とボスから聞いてたから」
春雨は蛮狸の惑星「カラル」から地球に入ってきたカラルの宇宙軍組織。
その密偵は1960年頃より密かに始まっていた。
1980年には人に化ける術を身につけて地球に蔓延るようになる。
ときは1999年、そのときに蛮狸を含む宇宙連合軍が地球の侵攻に踏み切る。
それが彼らのいう「ラグナ・ロク」であり、その記憶は蛮狸含む人々の記憶から抹消された――
幕田はその扉を開く。
「礼節が」
その大きなカプセルの中に入っていたのは伝説の魔女と謳われし英雄。
「人を創る」
牧野夕奈であった――
∀・)舛添って誰?ってなった人は第18話を参照してください。復習も大事。また次号。




