第2話「バレる!」
朝、スマホの振動で目を覚ます。
アラームなんてセットしていないのにと思っていたら、それは電話だった。
「え~? もしもし?」
『あ、もしもし、林萌香さんの電話番号で間違いない?』
「はい。誰ですか?」
『ドロップアウトの銀山と言います。昨日はごめんなさい。店の片付けまでして貰って』
「あぁ~そうでしたね。ははは。酒飲みの人が寝ていたと思うのですけど、あの人が店長さんか何かですかぁ?」
『うん、そう、そうだけど、昨日は私が店に行けなかったら面接ができなかったのよ。今日改めて来る事は出来ないかしら?』
「いや、あんな汚いカフェなんて初めてみましたよ。普段からあんな感じなの?」
『ううん、週2でしか開いてない。店長が住みこみでやっているけど、私が出勤できる日に限って店を開くの』
「なんだそりゃ」
『でも求人に書いてあった給料は事実よ。考え直してくれない?』
「う~ん」
求人に記されていたドロップアウトの給料は破格の高さであった。時給にして2000円はとても魅力的な数字であり、銀山のいうとおり週休5日~4日とかいう好待遇の話も嘘でないように思えてくる。
萌香が思うのも何だが、彼女は一体何者なのだろうか?
その興味のまま「じゃあ、もう一度だけゆきます」と萌香は少し考えたのちに返事した。銀山という女店員は「ありがとう! 待っているわ!」とそれはもうとっても嬉しそうに反応してくれた。
何か事情がある人なのだろう。
「私がそう想うのも可笑しいか」
ちょっと汚れたと思われた新品の服は実際だいぶ汚れてしまっていた。
「あといくらだっけ?」
彼女の財布の中身こそが彼女の全財産だった――
再び街の洋服屋に入る。ダボダボの小汚いメンズ服を着ての再登場だ。店員はみんなイヤ~な笑みを浮かべて「いらっしゃいませ」と彼女を迎え入れた。
その空気を察して萌香はさっさと服を選んで買い物を済ませた。
早く普通の人としての生活をおくれるようにしなければならない。
その焦りが彼女にあったからこそ、多少胡散臭くても賭けるしかない。
妙な緊張が彼女の胸を締めつけ始めていた。
ドロップアウトの前に立ったのは約束の1時間前。しかしノックをするとすぐに「どうぞ!」と快活な女性の声が。
萌香が綺麗にした店内にいたのは若い黒人女性だった。
「対面では初めまして! 林さん! 銀山空と言います! 宜しく!」
「あぁ~ははは。林萌香です。昨日の酔っ払いさんは?」
「趣味の釣りに出ているわ。ひとまずお話をしましょう。そのへんに座って」
白い歯をみせる明るいソラの誘導に応じるまま店の席に座る。
「ウチを選んでくれたのはどこの求人から?」
「ヘイワークスからです」
「給料が高いから応募したのかしら(笑)」
「それもありますけど、出勤日が少ないのが気になって」
「あぁ~私がそうだけど、掛け持ちで働いているのがウチは基本だから。林さんは他に仕事してないの?」
「広島に来たばかりで。慣れる為にも極力仕事ばかりの生活にしたくなくて」
違う。彼女には明らかにそうでない理由があった。
「え? 逆じゃない? 仕事を頑張る中でその町に慣れていくものじゃない?」
段々と早まっていた緊張が小走りから走るように……走る状態から猛ダッシュにまで変わってゆく。
まずい。
「えっ!?」
「あっ……」
林萌香は銀山空の目の前で狸の姿に還ってしまった――
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪驚いたでしょ(笑)(笑)(笑)本作はまずこういう作品でございます(笑)(笑)(笑)はい。そして来週から週1月9更新の通常運転でやってゆきます。いやぁ~ここで話を終わらすの我ながらにくいね。次号もぜひお楽しみに☆☆☆彡