第28話「ラーメンはいつ食べったって美味いものだから許される」
原田ジムの決戦から1週間。萌香の周囲も神泉組もそれがなかったように平然としていた……ように思えた。
「にゃあああああ!! 私達の先輩が利尿剤を飲まされてぶん殴られた!!!」
「不当暴力っす!! この顏をみたら私たちまで連絡っす!!!」
広島市内で下手なイラストの手配書が出回った。
「大事にさせているじゃない。たまといとの2人が」
「局長は何事もなかったようにされていますけどね」
「私はアンタがけしかけてこんな大事になったかと思ったよ」
「私はいつだって局長の想いに寄り添っていますから。鷹山さんはどうするつもりで?」
花園ちはやの奥にある和室の大広間で鷹山優と山崎生吹は向き合って話し合っていた。
鷹山は神泉組のメンバーより事の顛末を聞いた。
彼女達が通っているボクシングジムのリングで千速香澄は林萌香のアッパーを喰らって倒れて失禁した。
彼女はそれこそ憤慨しそうなものだが、その翌日からおとなしくなっていた。花屋の店主また神泉組局長として。
ドロップアウトは土日に開店しているのだが、萌香の姿はそこになかった。
「風邪をひいたらしいよい」
店主と思われる髭面の男がそう答えた。
ならば時間をおいてまた伺えばいいと思えるのだが、未来屋と七空の2人中心に「蛮狸が林萌香の隠蔽を働いている! 卑怯な手をつかって局長を倒した!」と息巻いて打倒林萌香を掲げて騒ぎだしたのだ。
鷹山はこの1日で何箱分ものタバコを消費している気がした。
「コレはもう副長を辞任するしかなさそうですね。遂に腹は決まりましたか?」
「何でそうなるのよ? あと何でバズーカを取り出すのよ? それとソレを私に向けるのは可笑しいだろ? バカなの? アホなの?」
消費する煙草が多いのか溜息が多いのかもう分からない。
千速は何を尋ねてもあの日の出来事は話そうとしないし、七空らの活動も特に支持していている訳でも止めようとしている訳でもない。
「五味やCEAの件もあるっていうのにな」
神泉組がどこを向いているのか? 彼女にそんな懸念が生じ始めた。
その頃、確かに萌香は風邪をひいていた。
「ちゃんと毛布をかぶって寝なきゃダメでしょうが」
その内科クリニックは横川の町の一角にひっそりとあった。
院長は萌香の知り合い。即ち蛮狸の男だ。
「だってソラたんの話があまりにも気になり過ぎたからさぁ! 仕事で疲れすぎたからさぁ! クシュンッ!!」
「そこの黒人のオネェちゃんも同じかい?」
「はい、先生のいうとおり、ちゃんと毛布をかけて寝なかったのが悪かったと反省しています」
「まぁ~薬はだしておくよ。飲んで数日で治るのは治るだろう」
「ありがとうございます」
「よっし! 昼休憩の時間だ! 今からいっしょにラーメン食いにいくか!!!」
「「はぁ!?」」
幕田帳。野茂重道と肩を並べる名高い蛮狸のカリスマだった――
∀・)幕田帳さんのネーミングは仲良くさせて貰っているなろう作家さんから「今からラーメンを食いにいくか!!!」は西川きよしさんから。また次号。お楽しみに。