第24話「粘り強さとしつこさは紙一重とは言いますがコレは?」
萌香たちは大変だった1日をやり過ごして日常を取り戻した。
大型バイクを運転するソラと後部座席で狸になる萌香が職場を目指す。
「その狸になるのって治らないの?」
「だって緊張するもん!! ソラたんったら、こんなブッ飛ばして!!」
ケラケラ笑うソラ。しかし気になっている事も話す。
「そういえばこないだって何かあったの?」
「何かって?」
「いやぁ~変なお客さんが多い1日だったけど、最後のお客さんの事がどうにも気になってさ」
「変な客ばかりだったから、疲れてソラたんの部屋で寝たのでしょ?」
「うん、また今週も来るのかな?」
「来たら来たで儲かるからいいよ」
「萌香って前向きね?」
「それだけが取り柄!」
2人の語らいは仕事の合間にも続く。
その最中で電話の着信が。
「お兄ちゃん? 何だろう?」
「でてあげたら?」
「何か嫌な予感がするのよね」
「じゃあ、ほっとくの?」
「もう、ソラたんのいじわる」
「優しさで言っているわよ?」
それは昼食をとっている時の事だった。
「もしもし」
『ああ、萌香、仕事中にすまん』
「愛媛に帰るんじゃなかった?」
『うん、そのつもりだよ。ただ妙な女に絡まれていて』
「妙な女?」
『ずっと変な女につけられている。たまに目の前に現れるのだけど、何の前フリもなく「私と結婚してくれ」と僕に迫ってきて』
「はぁ? 何それ?」
『僕の記憶じゃ会った事もないのだけど、このまま家にまでついてきそうで……」
「何で私に相談するの? いま広島にいるパパに相談したら?」
『父さんって広島に来ているの?』
「あれ? 来てなかったっけ?」
『まぁ、父さんからすごく説得されたから僕も広島をでるつもりになったけど、この女ときたら愛媛までついてきそうで……』
「う~ん」
萌香は悩んだ。彼女にとって心配性かつ個性が強すぎる海斗は目の上のたん瘤と言っても過言でない存在だ。新居を構えると話しだしたときは懇意にしている重道に相談し、とんでもない物件に住まわせる計画も企てたものだったが……
やっと厄介な海斗を跳ねのけそうなのに変なストーカー女が障害となってきたのだ。
「ぶん殴ってやったら?」
『女の人を相手にそれはできないよ!』
「わかった。じゃあ私がぶん殴ってやるよ!」
『えぇ!?』
ただちに電話を切る。そのまま昼食のコンビニ弁当を食べるソラへ「ごめん、もう仕事終わってイイ?」と告げる。「どうしたの!?」と思わず反応するソラであったが「お兄ちゃんが事故にあったみたいだから! 上司の高橋さんにうまく言っておいて!」と走り去る萌香に何も出来ずじまいだった――
「御用改めである!」
神泉組副長の鷹山優は1番隊隊長の山崎生吹と神泉組としての活動に参加していた。
「あぁ~ヨチヨチ♡ 可愛いですねぇ♡」
「は? ドンくさいババァが何しているのよ?」
「何だと山崎! この場でしばいてやろうか!」
優が面倒をみる幼児が「ウワァ~ン」と泣き出した。
ここは花園ちはやの近くにある幼稚園。地域交流という事で千速香澄の指示のもと、2番隊を除く全員がそのボランティアに参加していた。
千速も参加していた。
等身大パネルという形で。
「局長、あんなに楽しみにされていたのにどうしたんっすかね?」
「ふっ、あの人は最強の魔女として大事な仕事を人知れずやってくれる人だからねぇ。今頃、逞しく五味一派やCEAと対峙しているのかもしれないわよ?」
「だとしたら、局長ってやっぱカッコ良すぎるっす!」
「普段おちゃらけているからね。でも、いざとなったら頼りになるのが私たちの千速香澄よ」
「おい鷹山、サボってねぇで、ちゃんと子供の相手をしろ」
「お前はそのでっかいバズーカを仕舞え。山崎」
萌香はバスや電車を乗り継ぎ、広島駅の大広場までやってきた。
その噴水前に海斗はいた。周囲をキョロキョロ見渡しており、明らかに何かに怯えているよう。
「お兄ちゃん!」
萌香はすぐに彼の元へ駆け寄る。
しかし、もうすぐ傍にその女は来ていた。
「海斗君♡ 何度でも自己紹介するわよ♡ 普段はお花屋さんの店長♡ だけど趣味はジムに通いながら海水浴とテニスにも励んでいます♡ 永遠の20代♡ 千速かす……ぶぼへっ!?」
水着姿で片手にラケットと花束を持つ千速が現れたが、萌香の「どっちか1つにしろやぁ!!」のアッパーを喰らって撃墜された。
「何コイツ!?」
「ワケが分からなくて……どこに逃げても、どこにでも現れて……」
「こんな寒い季節にこんな人通りの多いところで何をしているのよ!? おい! 変なオバサン! アンタ、何者だ!?」
「うわぁ! 立ち上がった!」
「オメェもビクビクするな!」
鼻血を流しながらもビキニの千速はゆっくりと立ち上がる。
「アンタこそ何? もうチョットでうまくいきそうだったのに邪魔しやがって! ん? アンタは海斗君と同じ店にいた……」
千速のその言葉を聞くやいなや海斗は両手で萌香の腕を掴む。そして――
「僕の彼女です!」
「はっ?」
戸惑いつつも林萌香は千速香澄と向き合う。
眼前にいる女の瞳は狂っているように燃えて――
だが、萌香は呆れて溜息を吐くばかりで――
∀・)千速香澄さん、好き嫌い分かれそうだな(笑)あなたはどっち?宜しければご感想で教えてください(笑)また次号☆☆☆彡




