第23話「世の中には色んな奴がいるというけども、こんな奴はそうそういない」
風太はドロップアウトのカウンターテーブルに伏せて寝ていた。
ハッと目を覚ます。
目の前にいるのは食器を拭いている店のオーナーだ。
「アンタは……」
「ここの店主だよい」
「萌香は? 俺は?」
「2人ともここでスゲェ口喧嘩するものだから、そっと見守っていたよい。でも、どうにもケツがまとまらなくてさ、萌香は大声で怒鳴って帰ったみたいだよい。そしてアンタはやけ酒を飲んでいたよい」
「そうなのか……記憶にないな……」
「アンタ、何か店をやっているのかい?」
「ああ、何で分かる?」
「俺と似た感じがしたよい」
「商売人のクセってやつか」
「ふん、アンタも彼女たちと同じ狸かい?」
「!?」
「身構えるな。ありゃあ物事を隠せるってコじゃねぇよい。何があってこの店にやってきたのか知らねぇが、俺には筒抜けだったよい」
「アンタもただの人間じゃなさそうだな?」
「想像はご自由に。だけど道理で色々繋がったなぁ。お兄ちゃんは商売人としての素養があると一目みただけで分かったが、アンタの店の手伝いとかしてきたのだろうねぇ。将来有望なコだと思ったよい。ただ、まさかのタイプで驚いたよい」
「ああ、そんな気がしたよ。アンちゃんはアイツの好きそうなタイプだしなぁ。だからアイツには帰るように促したが……萌香も迷惑になる気がした。あのコはただのバカにみえてバカにできない天賦の才がある。それが本人の無意識の内に顕れたら、大事に至る。ふん、そこまでは見抜いてないか?」
「まぁ如何に凄い武器でも頭の悪いヤツが持ったら、意味をなさないからなぁ。ここまで敢えて何も言わなかったが、アンタらは蛮狸か?」
「よく知っているな。同胞か?」
「それは言えないよい」
蛮狸。化け狸の総称とも言われるが、実際は違う。地球外惑星からの外来種で約100年前から地球に入ってきた種族と謳われる。戦闘種族の頂点と云われており、怪我を負っても自然に治癒する体質も持つ。地球侵略が目的だと疑われている節もあれば、惑星から逃げて地球の人間との共存を目的としているとも。
しかし、この蛮狸の話はまたおいおい。
今は深く知る必要のない話だ。
風太は「釣りはいい」と一万円札を机に置き大地を背にする。
「勘定はいらねぇよい? 酒の話が嘘なのは分かっているだろぉい?」
「ははっ、俺は頼りにならない人間ならば萌香は預けられないが、人間じゃないアンちゃんなら別だ。だけど海斗は帰らせてもらうぞ? いいな?」
「お好きにどうぞ?」
「萌香に宜しくなぁ」
風太がドロップアウトを去る。
大地は「ふぅ」と息を吐いて、店内のリクライニングに目をやる。
そこでは気持ちよさそうに海斗が寝ていた。
2階ではソラの部屋で仲良しの2人が寝ている事にしている。
酒を飲んでいたのは自分だ。「そこで寝てOKなのは今日だけだぞ?」と海斗にズレだした毛布を掛けなおしてやる。
「超能力者に蛮狸に魔女かい。いよいよ面倒くさい事になりそうだなぁ」
彼は小皿に好物の酒を注いで「あー」と息を吐く。
それはどこか溜息のようでもあった――
∀・)大地と風太が語らうの巻でした。そしてここでドロップアウトにおける「蛮狸」の登場です。ここでいきなり馴染む事はないと思いますが、分かり易く説明すれば銀魂の夜兎みたいなものです。まぁ~この話もこれからです。また次号☆☆☆彡




