第22話「喫茶店にみんな集結!みんな変!みんな乱闘!ってどうなのよ!?」
一瞬時が止まった。どこかへ飛ばされてしまったような気もした。
でも、現実にもどる。
「あ、ゴリラでもワイルドで逞しくてセクシーなら愛します」
「本当か……! 体毛がボーボーでもか……!」
「それならば体毛ごと愛します」
香澄は勢いでそのまま「アタシと結婚してくれ! 海斗君!!」と大声をだすのと同時にその場で氷づいた。
「あぁ~すいません。これ以上迷惑をかけたくないので、凍らせておきました。あと誰にも譲るつもりがないので。えっと、勘定はここでいいですか?」
山崎生吹は凍りついた千速香澄を片手で持ち運び、万札をだした。
「あ、釣りはいいです。海斗君とやら、このお姉さんの事は忘れてあげてね。じゃあ。また」
何事もなかったかのように彼女は去っていった――
「あれ? 萌香は?」
ソラが気づいた時に彼女はもうそこにいなかった。
それと同時に大きな叫び声が聞こえる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
ドロップアウトすぐ近くで目を赤く光らせた狸と狸が喧嘩をしている。
「これは被害が大きくなる!」
ソラはその言葉と同時に両者の間に入って両者の動きを止めた。
「銀山さん……それは……」
ソラの眼は赤く光り輝いていた。海斗はその光景をポカンとみるばかり。
「やれやれ。困った事しか起こさない連中だよい」
「大地さん?」
海斗の後ろに現れた大地がそう言うと、あたりは眩い閃光に照らされる。
そして再び萌香たちは一時的なその記憶を消す事となる――
萌香と彼女の父・風太が喧嘩を始めた頃にドロップアウトを監視する者たちが戦いを始めてもいた。
その1日はずっと神泉組がローテを作ってドロップアウトに入店してゆく。
「フッフッフ……完全に神泉組のシマになってしまったみたいだなぁ」
「あそこのオムライスに敵う店などはそうそうない。惜しいでござる」
「へぇ。食べ物は美味しいのね。じゃあ今度頼もうかな?」
五味と岩鳥が声のしたほうに振り向くと、そこに箒を持った魔女が立っていた。
「フッフッフ。神泉組の隊長格か。嵌められたな」
「しかし2対1でござる。我らに不備はござらん」
鷹山優は目を蒼く光らせる。持っていた箒は日本刀と化す。
「人外なのは知っている。容赦はしない」
その鷹山の言葉がでたやいなや彼女は真っ黒な空間に包まれた。
(空間移動!?)
彼女は周囲を見渡しながら構える。
「ぐっ!」
右腕に激痛が走る。そこに斬撃が入ったようだ。
しかし即座に赤い粒子砲を放つ。獣の悲鳴がその耳に入る。
そして目を閉じて感じるままに刀を振るう。
同じく刀で攻撃をしてきた五味と刀を交えた。
「フッフッフ、封じこめても迷わない魔女か。大した野郎だ」
「幻術かしら? スキンヘッドさんは今のヤツで死んでないといいけど?」
「フッフッフ、あれぐらいで死ぬ奴なら最初から雇わないさ」
五味の顔は真っ赤になっている。鬼? いや違う実体があるようだ。
彼女が考えている刹那、五味は片手で拳銃を取りだす。
「フッフッフ! ただの鉛玉だと思うなよ!」
しかし五味の拳銃を持った片腕は一瞬にして斬りとられた。
「なに!?」
刀ではない赤い糸のようなものが見える。
「運命の赤い糸って言うと、ソレが攻撃だとしても嫌かしら?」
五味のすぐ後ろに神泉組3番隊副長・悠月杏奈が立っていた。
「空間転移が扱えるとは。何者にしてもタダ者ではありませんわね」
「ヅラ! 増援にきてくれたのね! 助かる!」
「ヅラじゃありませんわよ? 桂でしてよ?」
「ふふ、そういう事! 五味秀一! ここで成敗!!」
鷹山が振りかぶって斬撃を見舞う……が、巨大な鳥が現れて攻撃を遮った。五味はその鳥の背中に乗る。いつの間にか斬られた腕も復活していた。
「フッフッフ、千載一遇の機を逃したな。また会おうぞ。魔女共!!!」
五味は空高く星空の浮かぶ夜空へと消えた。
そして空間はすっかり現実空間に。
「悪いわね……仕留められなかった……」
「いいですわよ! それよりその腕! すぐに処置を施さないと! 悠月さん!」
「ただちに!」
悠月は桂同様に血術魔法に長けた魔女。糸状にしたその魔法は攻撃だけでなく傷の治癒にも効果を持つ。裁縫で縫うように鷹山の傷をその縫合術で治してゆく。その器用さは鷹山も桂も何度でも感心を示すほどのもの。
それにしても五味一派との戦いは摩訶不思議なものに他ならなかった。
単純な理屈の戦いでは勝ち目がないとすら思える。
少し時間が掛かったが鷹山の腕も元通りになった。
激痛を感じてもおかしくないほどの損傷。それでもそれを堪えなければ、命を失ったかもしれない。煙草を吹かしながら彼女は五味たちの消えた星空を眺める。
「明日、あの店で何か頼もうかな?」
優はちょっとだけ苦笑いを浮かべて、そう呟いた――
∀・)読了ありがとうございました。喫茶店の話を書けば「これってそういう話だよなぁ~」って思うし、ファンタジー的な話を書けば「これってそういう話でもあるよなぁ~」って思うこの頃で。まぁ何にしても自分&読者様が楽しめればそれが理想って事でまた次号☆☆☆彡