第14話「腐れ縁って気がついたら憑いているものだよね?」
半ば強制的な感じで海斗の入居が決まった翌日。
当然のごとく重道は林風太に電話を掛けていた。
「萌香ちゃんだけじゃなくて海斗君まで広島に来たようでぇ。大丈夫か?」
『重道さんも俺らの事は言えないだろう?』
「はっはっは! 1本とられたな! でもアンタも店は離れられない筈だ」
『いや、展開が展開だけに心配ではある。店は1週間ほど休む事にしたよ』
「えっ? そいつはどういうことだい?」
『もう、向かっているよ』
萌香と海斗の父である風太はフェリーに乗って広島を目指していた――
時を同じくして喫茶店ドロップアウトで萌香たち兄妹とソラがオリエンテーションを行う。
「そんなにお金をとるものなの? この店ってさ?」
「なるほど。だから週2日勤務でもこの給料なのか。ぼったくりカフェだな」
「ええ。それでもお得意さんがこないだまでいたけども、誰かさんのお蔭で失ったわ」
「いや、私のせいにするの酷くない? 私はソラたんからも被害にあったのだけど!」
「お前がヤクザ相手に笑うのもいけないだろう? まぁこの店もこの店で変テコだが」
「というかアンタたち、新人のクセに敬語の1つも使わないの絶対におかしいわよ?」
ソラからはこの店で働く為に兼業で何か仕事をして欲しいと願われる。その理由は――
「職員の寄付で賄っている!?」
「そう。私はこう見えてココと引っ越し屋の掛け持ちでバイトしているわ。それと投資も。自分の生活を多少は投げうって頑張っているのよ?」
「何でそこまで……」
「元々カフェをやってみたくて。店長の森さんとは腐れ縁でこの広島にやってきた時から家族同然の仲でね。それでずっと夢だったカフェ開店を数年かけて手伝ってくれた」
「ん? 待って。ソラたんって本職が超能力でウンタラとか言わなかった?」
「あぁ~それも腐れ縁で続けている副職みたいなものかな。でも、いずれはこの店1本でやっていくつもり。その為にはもっとお客さんに愛されて忙しくなる店を目指さないといけないから!だから――」
「釈然としないね」
「だな。同意する」
「何が?」
「私が狸だってわかった時に妙にワクワクしていたソラたんを思い出すのよ。その時に超能力でウンタラの話をだしたのは目が赤くなる自分を隠しきれないから説明した感じなの?」
「それは……」
「僕らの素性はさっきひと通り話した筈だ。これから一緒に頑張っていくならアンタたちも色々教えるべきだ。大地さんのことだけでもいい! 大地さんのことは事詳しく!! この僕に!!!」
「お兄ちゃん、タダタダ痛いよ?」
ソラが溜息をつき何か話を切りだそうとしたタイミングでカランコロンと玄関が開いた。
「あ! 魔女の宅急便ヲタのおばちゃん!」
「もののけ姫派よ? 家出娘ちゃん」
私服であろうブラウスに厚着を羽織った鷹山優がやってきた。
「あの? 今日は店をやってないのですけど?」
「あら? そう? 電気がついているからやっているのかと」
「軽いヤツなら私でも出せない事はないですが……」
「じゃあすぐに作れそうな飲めるヤツで。できれば砂糖を少し入れてくれたら」
優は指をパチッと鳴らしてコーヒー機を指さす。ソラはやれやれといった顏をして応ずる。
さらにまた玄関の音が嫌に耳へ響く。
「あのう! だから今日は店をやってないって!」
ソラはその男と顔を合わせて目を見開く。
「ボス…………」
「よぉ。元気そうにやっていそうじゃねぇか。俺にはブラックでドギツいの頼む」
腐れ縁って気がついたら憑いているものなのか――
∀・)ご一読ありがとうございます!行きつけの店が開店してないのに電気がついていたら入りたくなる事ってありませんか?うん、まぁ、入らないけどね(笑)また次号☆☆☆彡