第10話「CATCH ME IF YOU CAN」
青空がよく映える愛媛のとある高校の校庭――
今から振り返ること5~6年まえ。
ある男子が新入生の挨拶でその教室の度肝を揺らす。
「ただの人間には興味がありません。このなかに宇宙人、魔女、妖怪、超能力者がいたら、僕のところに来てください。以上」
ウケねらいか? 学校を舐めてかかった態度か?
教師は苦笑い。生徒たちは唖然とした顏で彼を見る。
ただ一人の男子だけを除いて――
「君、面白いね」
「君は超能力者?」
「だったらいいけど違うね」
「名前は?」
「長門勇気だよ。林海斗君」
海斗が高校1年生になったとき、彼は思いつきで吐いた挨拶に反応する者などいないと思っていた。しかし反応してくる奴が彼のすぐ後ろに座っている。
「部活はどうする?」
「サッカー部に入ろうかなって一応思っているよ」
「そうか、君もそうするなら僕もそうしようなぁ」
長門も海斗も頭脳明晰で運動神経も良くクラスはおろか、学年の女子の間では他の誰も敵わない人気者。
しかし彼らは飽きっぽくて気まぐれの掴みどころのないコンビでもあった。
一緒に入部したサッカー部はわずか1カ月で退部。一転して野球部も1ヵ月で退部。このようにして彼らは全12ある部活を一カ月ごとに入部しては去る。
どの部活でもセンス抜群の活躍をみせているにも関わらず。
「君って何者なの?」
ある日、海斗は書道部で一筆仕上げて、長門に問う。
「それは僕が君に聞きたい事だね」
化け狸だ……とはまさかいう事なんてできない。
でも、おそらくこの男もまた平凡な生を授かった者ではないのだろう。
そんな気がした。
海斗が描いたのは「想」の一文字。
それをうっとりした目で眺める長門の瞳に海斗は釘づけになる。
心を動かされることはこれまでそうなかった。
心のなかが気になる彼でいっぱいになる。
そしてその彼は2年生になる頃になって消えた。
誰しもが噂した。林と長門で酷い喧嘩をしたのだろうと。同性愛の疑いすらもかけられたが、実際は学校でしか顔を合わせない。
それこそ2年生になってからはクラスも離れる事に。
文系に進む海斗とは違い、長門は理数系のコースへ進路を進めたのだ。
それでもお互い順風満帆に高校生活を過ごしていくのだと思っていた。
長門の存在は2年生の春を迎えた途端に消えた。
電話もラインも繋がらない。彼が学校にいたことも。ただ「事情があって退学した」という事実だけが告げられた。
海斗も学校を辞めてしまえばいいかと思えた。
しかし、彼にはそれができなかった。
いつしか彼は長門を追うようになる。
どこかにいってしまった彼。
いや、本当は知っている。あの日、あの晩、大きな円盤状の飛行船のなかへと勇気は消えていった――
『見られちゃったね。でも、君じゃ僕は捕まえられない。捕まえたいなら捕まえてごらん?』
彼は振りむいて海斗にそう話す。
「はっ!」
夢から覚める。ここは萌香の家のソファー。
「やっと起きたね。じゃあそろそろ家をでるよ!」
「えっ?」
「お家探し! するのでしょ?」
「そうだったな」
彼は彼でロマンを求めていた。そして居場所も求めていた。
この物語はその物語でもある――
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪オマージュ分かる人にはよく分かるオマージュでしたね(笑)海斗君がみた夢?なおはなしでした。のちほどこのサブタイと同タイトルまた内容もほぼ同じ短編作品を投稿する予定なんだけども、本作とは全く関係のないものになります…………多分(笑)また次号☆☆☆彡