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第七十ニ話 結婚?

「そなたは何を言っている? この城の中で人が殺されたのだぞ。そのような状況で願う内容ではない」

「貴方たちは、私を化け物として扱っています。それなのに、都合の良いときだけ私を人間扱いしないでください。不愉快ですから」


 ソフィーの言葉に、国王は目線を合わせることなくため息を吐いた。


「何故、いきなり結婚したいなどと言う」

「貴方、馬鹿なんですか? 私が結婚したいからしたいと言っただけです」

「何故結婚したいのだ」

「そんなの、決まっているではないですか。マリアが好きだからです。だから、私は皆に宣言したい。彼女は私のものだと。だから彼女を傷つけることは許されないと、全ての人間にそう認識させたいのです」


 その発言を聞き、アレンは笑い出す。


「なるほど、その女を守りたいかソフィー。化け物らしい発想だが、人間らしくもある。これは傑作だな」


 ひとしきり笑った後、アレンは国王に顔を向ける。


「父上、俺は賛成だ。マリアのことは、それなりに把握している」


 カーチスはマリアの表情を伺い、尋ねる。


「マリアさんは、ソフィーと結婚したいのでしょうか?」


 ――そんなの、分からない。分からないが、マリアは反射的に頷いてしまう。


「そうですか、ならば、僕も賛成です。彼女との付き合いはそれほどありませんが、それでも、僕は信頼しています」


 国王はしばらく目を閉じ、思案する。


「セラ、お前が一緒にいると言うことは、この件について賛成したと言うことなのだな」

「そう受け取って貰って構わないわ」

「マリア」


 国王に名を呼ばれ、マリアは背筋を伸ばす。


「そなたのことは、セラから話は聞いておる。だからそれなりに信頼はしておるが、結婚の許可を与えられる程ではない。だから私は、そなたを信じるのではなく、彼女と息子たちの判断を信じよう」


 そう言って、国王は頭を下げる。


「娘のことを、頼む」


 マリアは国王の予想外の行動に、反応が遅れ、まごついた。


「それでは、明日は派手に催しが開催されると思って良いのですね。私は国中の人間に少しでも早く伝えたいのです、マリアは私のものだと」


 そう言って、ソフィーは満足気な顔をする。


「急にできるわけがないだろう。少し考えれば分かることだ。今日は我々だけで儀式を行う。そしてそなたには明日、行って貰わねばならぬところがある。盛大な式はその後だ」

「意味が分かりません、何故行かねばならないのですか?」

「そういう決まりなのだ。先代の精霊の子もそこへ行き、試練を受けた。そこで祝福を受け、子を成す神具を授かった」

「そこへ、マリアとふたりでですか?」

「ひとりで行ってもらわねばならん。そこには精霊の子以外、入れぬ聖域だと聞く」

「それはどれぐらいの時間がかかるものなのですか?」

「4、5日ほどだと聞いている」


 ソフィーは眉を顰める。

 

「……馬鹿なんですか? その間に、マリアの身に何かがあったらどうするのですか」

「そのために、今日の夜、血の儀式を行う。それでマリアを守ることはできよう」


 ソフィーは難色を示す。

 

「それが納得できぬというならば、この話はなしだ。婚約など認めない」

「……分かりました。場所はどこなのですか?」

「後でとある物を渡す。それは王家の秘宝のひとつだ。それが、そなたに道を示すだろう」

「そうなのですね、分かりました」

「それで良いな、オーランド」

「ええ、構いませんとも。儀式の準備は僕の方で行います。開始時刻に関しては僕の使い魔に連絡をさせましょう」


 オーランドはじっとマリアを眺める。


「何です?」


 今日はやたら見られる日だなぁーと、マリアは思う。


「先程まで、僕が口を挟める瞬間がなかったので今更ですが、僕もお二人の結婚には大賛成ですよ。何せ僕は、マリアさんの大ファンですから」


 オーランドはそんなふざけたことを言った。


「でも、本当に今でいいのかしら? 敵の目的も、実力も把握できていない状態で、ソフィー様を外に出すのはあまり宜しくないと思うのだけれど」


 聖女は王に尋ねた。

 とてもじゃないが、あれで終わりだとはとても思えないからだ。


「たかが4、5日でなにができる? それにこちらもただ指を咥えて待つだけではない。色々と秘策はある」


 そう言った後、王は笑う。


「我々の城の中で喧嘩を売ったこと、後悔させてやろうではないか」

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