耕す
3・職業その1
第一次産業の就労が島民のほぼ半数を超える。漁業・水産業が一番多く、次に農業、林業と続く。鉱業は鉱脈が限られているため、かなり少ない。
「おまえぇさんは、本当に筋がいい」
バナットの祖母のコルキナは、カラタが手伝いに行きはじめた5才のころから、変わらずそう褒め続けた。そのお陰か、まあ、他に人もいなかったせいもあるだろうが、血縁でないにも関わらず、コルキナの瓜畑をカラタが継ぐことに、誰も反対を唱えなかった。それにカラタはコルキナが亡くなった時、14才にして、立派な瓜を作ることができるようになっていた。
バナットと結婚することが決まった時、カラタは畑を守りながら、バナットの新しい家族を見ているだけの立場にならずにすんで、心底ほっとした。
畑はカラタのものだけれど、この高台にある高床の家は、コルキナのたったひとりしか残らなかった孫のバナットが受け継ぐことに決まっていたし、カラタの祖母の家からここまで通うことも大した苦労ではない。だからもしも結婚しなかった時、カラタは毎朝畑の世話に通い、畑から見える家に住む誰かにもやもやした感情を抱いていたかもしれなかった。
そう思うとカラタは胸がぎゅっと苦しくなる。結婚した今も、まだなる。
バナットが幼馴染という以外のどんな理由でカラタと結婚しようと思ったのか、カラタはよくわからない。それでもバナットはちゃんとカラタを好きで大事にしている。胸がぎゅっとなっても、バナットの気持ちがわかっているから、それは安堵の上にある。たまに確かめたくなる「ぎゅっ」である。
「ただいまぁ」
瓜畑いたカラタに、坂道からバナットの声が届いた。今日は帰りが早い。声が明るいから、大物が獲れて早く帰ってきたのだろう。
えいやっと、大きな瓜を持ち上げると、カラタは家に向かって歩きながら応えた。
「お帰りなさぁい」
慌てたように、バナットが自分の獲物を置いて走ってくるのが見えて、カラタは知らず微笑んだ。