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2/12

守り・改

少しですが、改稿しています。

「ちょっと心配だったから。波、荒いし」

「大丈夫だよ」

 バナットは肩まで伸ばした黒い巻き毛を括り直しながら苦笑した。

 港で背伸びをして待っているカラタを見つけたバナットは、船が波打ち際に着く前に浜に降りたって妻に駆け寄っていた。

 船着き場で精いっぱい背伸びをしている妻を見つけ、何かあったのかと焦ったのだ。杞憂だったのだから船に戻ればいいのだが、今日は獲物も無かったし、船着き場に落ち着いた船の上では、コアツァが帰れというように手を振っている。だからバナットは、まあ、いいだろうと、カラタを再び振り返り、「あれ?」と呟く。

「何にも持ってない」

「持って、ないわよ? なんで?」

「いつも持ってるじゃない。なんか、ちっちゃな袋とか、瓜とか」

 そんなことないと少し膨れるカラタの手を、バナットは「別いいけど」と軽く握ると、「じゃあ、帰ろうか。お腹減ったし。ダイナの市場、寄っていく? きっとウズがあがっているよ。今日は潮がよかったから」と続けた。

 大きな手を握り返しながら、「ううん、まだポア貝があるよ」と首を振るカラタに、「あ、じゃあ、俺、それにアオメをつけて煮たいな。作っていい?」とバナットが目を輝かせた。この煮物がものすごく好きなのだ。

「うん。お願い」

 カラタも大好きだ。

 ふたりはカラタが走るそれの半分以下の速度で、ゆっくりと坂道を上っていった。




2・市場

 数年前まで農産物、海産物ともに、ほぼ島内の自給で賄えていた。しかし観光資源の強化と島内では賄えないものの需要が拡大し、海外からの輸入品の増加が著しく、各市町村の市場で取り扱う品物の種類も増えている。しかしその一方、輸入品の販売には厳しい規制があり許可制となっている。そのため輸入業者はかなり限られている。



「いらねえよ」

 コアツァが渋い声を出した。

「そう言わずに」

 バナットはそっと、手元にある物をコアツァの方へを押し出す。

「お前が使えばいいじゃ」

 バナットの腰にあるものが目に入ったコアツァは言葉をため息で終わらせると、「しょうがねえな」と手に取った。

「ありがとう」

「礼もいらねえだろう。なんで貰った方が礼を言われなきゃなんねえんだよ」

 だがバナットは笑いながら、もう一度「でもありがとう」と礼を言った。

「いらないだろうとは思ったんだけどさ」

 腰帯に付ける守袋は大概は親から子へと渡すものだが、親が無い子もいれば、心配性の妹がいる兄もいるのだ。

 このところ、海が荒れる日が続いている。島の移動と潮の加減のせいで、天候はそれほど崩れることが無いから毎日漁に出ている。カラタはそれが心配で仕方がないようだ。

 コアツァは夫の心配だけしてればいいだろうと言ってやりたかったが、妹に対してどうも甘くなるのは自覚している。市場で見つけたという輸入品の玉石がお守りになると聞いたカラタは、これでもかというぐらいに手が込んだ守袋を夫と兄、もちろん叔父たちや従兄弟の分まで作りあげた。

「しょうがねえなぁ」

 コアツァは少しばかり大きくて邪魔になりそうな守袋を、それでも丁寧にしっかりと、外れたりしないように帯に結わえ付けた。


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