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13月16日

 謁見の間に跪くのは、ピンク色の翼をもったハーピィさんひとりである。一羽? 呼び方はわからぬ。見える範囲全部単色だから、インコの類ではなさそう。もちろんピンクの範囲でグラデーションはあるけれど、自分の知っている鳥とは何かが違う気がする。

 いつものようにどっしりと玉座に腰かけているが、背もたれには軽くしかあてない魔王様と、極彩色の鳥の頭を持つ宰相様。以上三名がこの部屋にいるすべてだ。

 そういえば小説に書いてあった中世近世のヨーロッパやナーロッパの謁見の間って兵士さんが詰めてたりするはずなんだけれど、ここでは見たことがないな。それはあれなの。やっぱり魔王様が最強だからいらないとかそういうあれなの?


「面を上げよ」


 いつ聞いても魔王様の重低音ボイスは威圧感がある。まあ、魔王様の声がボーイソプラノとかね、倒しづらいよね。


「は」


 ハーピィさんはとても美人だった。

 黒目勝ちの瞳に、ばっさばさのピンク色のまつげ、通った鼻筋に、おちょぼ口。かわいい。魅了の歌とかなくてもこれは魅了待ったなしですわ。ハーピィスキーな友人だったら一瞬でころりと落ちるね! 間違いない! ……断言できるのもどうなの。

 てかくちばしじゃないのちょっとビックリ。

 宰相様は鳥獣人とかになるのだろうか。

 同じ鳥のような種族だけれど、ハーピィさんは首からショートマントみたいな服を着ちゃっているのでちょっとわかりづらいけれど、手にかけてが羽。その後、見える範囲だと太ももの中ほどからは鳥の足だ。


「報告を」


 宰相様に促され、ハーピィさんが頷いて立ち上がる。胸に手を当てて、腰を折る。いつもの魔王様への挨拶だ。ハーピィさんはそういえば今回、お名前呼ばれませんでしたね。ハーピィさんはハーピィさんなのか。

 まあ気を取り直して。ハーピィさんは拳を握れないから、翼の形のまま、胸に手を当てた。。


「ヒトの勇者は一時荒野の中ほどまで来ましたが、大蠍ベチュカの群れに会い撤退。その際九人いたパーティは半数ほどに数を減らしたそうです」

「そうか」

「引き続き監視に勤めよ。荒野を渡り切る様子が見えたらお前が相手をし、副官などに報告に来させるよう」

「承知いたしました」


 ハーピィさんは再度胸に翼を当て、腰を折った。

 魔王様は口数少なに報告を聞くだけで、指示を出すのは宰相様だ。


「よい。下がれ」

「は」


 踵を返し、ハーピィさんは立ち去った。その鳥と同じ形状の二本の足で歩いて。

 飛ばないんだ。歩くんだ。

 まあでもそうか。魔王様の前で飛ぶとか、不敬っぽいか。

 しかしこれ、ここでやる必要ある? それこそ報告書とかでよくない? どうせ指示も宰相様が出したんだし。


 ああ、これあれか。

 いつだったかはわからないけれど、前にあった、ほら、飛び上がってはふわふわ落ちてくるトロールが派兵頼んでたあれか。

 確かあの時も勇者荒野の中ほどじゃなかったっけ。成長していないのか一進一退なのか。どうなのか。

 ここからだと判断つかないなぁ。

 いやでも、戦士と魔法使いがお酒と煎餅になった割に、その場にいるのってすごくね? もしかして戦士と魔法使いがすでにお酒と煎餅になっていることを知らずに、取り返そうとしているんだろうか。

 だとしたら、とても不憫だ。

*20240622 加筆修正しました。

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