ニート
窓ガラスを強く叩きつける雨風に、憂鬱な気持ちになる2月16日午前0時9分。僕は今PCの画面とただ真っすぐ向き合っていた。部屋の中はカタカタとキーボードを叩く音と、ファンが稼働するノイズがだけが聞こえる。僕は今小説家になろうのサイトページを開いた。当時の記憶が少しだけ蘇り懐かしさを覚えるが、作品や書いたコメント等は過去に全て削除したので、自分がどんな活動をしていたのかあまりよく覚えていない。詩とか投稿していたな。物語も出していたけど、モノクロ写真をデジタル化してカラーに復元する技術の説明くらいには伝わりづらかった内容だったと思うな、こんな感じで。執筆は約三年ぶりだ。当時は自分には才能が無いと思ったので、執筆をやめていた。勿論、今も才能は無いと思っているのだが。
執筆を辞めて、僕は今DAWを開いている。DAWとはデジタル・オーディオ・ワークステーションの略で、デジタルで音声の録音、編集、ミキシング、編曲など一連の作業が出来るように構成された一体型のシステムをさす。(wikipediaから引用)ノートパソコンの隣には、無造作に置かれた箱型のオーディオインターフェースとまるで本来その位置にあることが正しいかのように平然と置かれているモニターヘッドフォン。僕はヘッドフォンを頭に装着し、ボリュームのつまみを徐々に上げていく。音量をある程度大きくした状態で、すっきりしない部分を探していく。気になるところがあれば、それぞれの楽器の音をより鮮明に聞かせれるように、EQやリバーブを調整する。つまり、僕は作曲をしている人間らしい。ボカロPを自称している。
僕は今学校に行っていない。春休みだ。ただ他の人少し違うのは、僕は今年高校三年生になる。理由は、半年年間不登校していた時期があり、現在は全日制高校から編入して通信制高校に通っているからだ。つまり学校行っていないことは日常で全日制に比べて登校日が極めて少ない。僕はそれを良いことに自由に音楽を作っているのだが、バイトしていないのでお金は無く部屋にひきこもっていて創作のネタや文化・情報を入手する手段や娯楽は全て某動画投稿サイトなどのSNSだけで完結している。漫画や小説を買うことは出来ず、部屋にテレビがないので全く見ない。そんな中僕は現在17曲をサイトにアップロードしている。どれも再生数が三桁、チャンネル登録者も同様。僕は社会不適合者だった。
午後17時8分僕は今自転車を漕いでいる。ある場所へ向かっているのだ。体全身から重さを感じ、強烈な眠気が僕を襲った。乱れた呼吸を一定のリズムで整わせることを続けた。度重ねる信号と堤防に挟まれた大きな川を超え、急な上り坂や下り坂を経てやっとのことで着いたその場所は、薬局である。自分が想像しているより一回り、小規模な外観であった。僕は、自転車を駐車することも、自転車から下りることもせずにその場を後にした。
僕は今トイレにいる。食べた物を吐いている。過食嘔吐という病気らしい。もともとは拒食症になって、どこかで食べる事をしないといけないということを強いられて、いやどちらかというと自分からそうすることを望んでそうするようになった。今日は過食というより、口に物を入れて味を噛みしめて吐く”チューイング”に近かった。嘔吐した際に上がってきた胃液が歯に付着して溶けてしまうので、吐いた後歯磨きを忘れないようにしている。幼少期の頃、不運にも生えてこないはずの歯が全体の歯のバランスを悪くし成長の障害になることから、県病院で手術したり矯正治療などを小学五年生くらいまで受けて、綺麗な歯並びにしてもらったのだが、それまで費やしてもらった多額の費用を帳消しにしてしまうくらいに、ここ数年で生えているほぼ全ての歯を虫歯に変えてしまった。とんでもない親不孝であるのだが、残念なことに僕の中にわずかな良心でさえも残っていなかった。大きなもの何か所かは治療を受けて現在は少しずつ回復しつつあるが、未だにその原因であろう摂食障害が治る見込みは無い。また現在十八歳という若さでありながら僕は今痔を患っている。嘔吐した後や便を足した後、肛門がヒリヒリと痛み長時間座る作業が多いので、日々悪化している感じがある。これは過食嘔吐から来ているものなのか、強いストレス性のものなのかよくわからないが、それなりに仲良く付き合って行こうとは思う。僕は今何かと闘っている。それが精神的なものなのか肉体的なものかはっきりとは、わからないが毎日自傷行為に走っているのは事実かもしれない。僕はずっと前から、それをやめたい。
薬局の帰りにスーパーに寄った。なぜ薬局で買い物しなかったのか。恐らく彼はかなり頭が悪い。レジに並び商品を買う。小銭を出すだけの作業でなぜか手が震える。店員と全く目が合わせられなかった、それもいつものことなんだが。今日の昼はエナジードリンクと値引きされた和菓子だった。母は夕飯を作ってくれるが、僕はそれが食べれないとわがままを言った。俺は情けないやつだ。リュックに物を詰めて、自転車に乗るとフードを被り、壁の間を恐る恐るすり抜けるような気持ちでそこを後にした。
僕は今、トイレの中で動画を見ている。今日はホラーゲームの実況動画を1.5倍速にして見ていた。いつもは1.25倍速にして見ているのでいつもより少し速く違和感があったが、ゲーム内のbgmやseが劣化することを覗けば、意外と見てはいられる。ただ倍速にすると、実況者が滑った間を誤魔化す時間も短くなるので、つまらなさが倍増した。他にも虫を食べる人の動画を見た。初めは虫の見た目のグロテスクさと、主の非人道的でサイコパスっぽい行為に対して、かなり良くない印象を受けていた。実際見てみると、良くは無かった。でも、恐らく自分が生きているうちにそう何度も体験できない映像だろうというアイデアの希少性と、虫はタンパク質を豊富に含んでいる栄養源で、他の家畜と差別化している一般の方がある種、恐ろしい気がして、最後まで笑顔で閲覧した。
僕は今バイトをしたいらしく、バイトを始めることを考えている。某求人サイトで募集があった薬局にしようと思う。今日薬局に行ったのは、場所を確認するためだった。人生においてバイトしたことは一度もなく、面接で落ちることはよくあることであるという周知の事実を理解していながらも、全く一歩目を踏み出すことが出来ない。電話の仕方や、履歴書の書き方、社会人として望ましい態度というものをなんとなくわかっていても、そういうビジネスマンらしい振る舞いや礼儀正しさは、恐らく動物の中でも人間しかしないであろうことで、それをすること自体が仕事にとって効率的なものなのか、はたまたそれがストレスを強く感じさせ慢性的な病気を患ったり、必要以上に購買行動に走る要因なのではないか。とかどうでもいいこと考えてしまって、あるいはそれを理由に全く初めの一歩を出せずにいた。世の中にも虫を食べる人間もいるんだ、いろんな考え方があったって良いじゃないかとか思った。
気づけば雨が止み、冷たい風がじんわりと伝わってくることが、開けた窓の僅かな隙間から感じられた。午前3時37分僕は何かを悟っている気分に浸っていた。俗にいう賢者タイムだ。僕は今PCの画面とただ真っすぐ向き合っていた。キーボードの凹凸の感触を感じる両指があり、少し不快感を覚える蒸し暑さが部屋に籠っていた。僕は今小説家になろうのサイトページを開いた。白紙のページに作品を投稿する当時の記憶が少しだけ蘇り懐かしさを覚える。当時は自分には才能が無いと思ったので、執筆をやめていた。勿論、今も才能は無いと思っているのだが、
午前5時11分、無事に投稿が終わった。
僕は今起きている。勿論寝るつもりもない、昼夜逆転を治したいからだ。夜になるまで寝てはいけない。今日も肩がこっている。
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