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G-MoMo~銀暦少女モモ~  作者: 凰太郎
ウチの銀暦事情
7/40

ウチの銀暦事情 Fractal.7

挿絵(By みてみん)

「どう見ても〈イザーナ〉や〈ミヴィーク〉と同じ(・・)やん! ただ〈エイ型〉なだけや! 何なん? アレ?」

『ちょっとマリー、何なのよ! アレ!』

『え~? わたしに言われてもぉ~?』

『この〈ミヴィーク〉も〈イザーナ〉も、ハウゼン製でしょ!』

『うん、そうだよ? ついでに言えば〈ツェレーク〉も。ウィリスお爺ちゃんが着想した設計図を基にして、銀邦(ぎんぽう)に建造してもらったの ♪ 』

 あっけらかんとした温顔で言いはった。

『じゃ、やっぱハウゼン製じゃないのよ!』

『違うってば! あんなの、お爺ちゃんの残した設計図にも無かったし、わたしだって監修してないもん!』

 プゥと頬っぺた膨らまる二〇歳(はたち)の天才美女。

 アカン!

 帰って来て! 表マリー!

 と、その直後!

『ケルルルルルッ!』

『キュウーッ! キュウーーッ!』

 今度はイルカとシャチが興奮に騒ぎだした!

 気性の荒い〈ミヴィーク〉は攻撃的な警戒心を現し、おとなしい性格の〈イザーナ〉は脅えながら威嚇(いかく)しとるようやった!

「よしよし……どないしたん? 怖ないよ? イザーナ?」

 コンソールを()()でして(なだ)めたげる。

 せやけど、あんまり効果無しや。

「リンちゃん? この子達、どないしたんやろ? エラい脅えとるよ?」

『……そりゃそうでしょうよ』レーダーモニターへと釘付けのままで、リンちゃんは深刻な表情に染まっとる。『アイツ、追われてる! レーダーに追尾機影反応あり──エネルギー測定値が大きいから、こっちは〈大型宇宙船(シップ)〉に間違いない! おまけに時折、高速熱源反応──つまり攻撃(・・)されてるって事よ! ミサイルかビームか知らないけど!』

「分かった! ウチ、(たす)けてくるね! 行くよ、イザーナ!」

『キューッ!』

『どっちにせよ、もうすぐ視認範囲だから──って、モモッ?』

 リンちゃんの制止、ちょっと遅かったわ。

 ウチとイザーナ、もう飛び出しとったもん。





 本意気になった〈イザーナ〉の航行速度は速い!

 五分もせんと見えたんは、被弾に(あえ)ぐ〈エイ〉と、その衰弱に容赦無い追撃を加えるイジメっ子(・・・・・)

 船首に大きなドクロをあしらった船や!

 せやけど、誰であろうと関係あらへん!

 弱いものイジメはアカン!

「イザーナ、突撃や!」『キュウ!』

 星の大海で縦横無尽な曲を描いた!

 わざと目障りになるように、ドクロ船の周囲を(まと)わり泳ぐ!

 (ほど)なくして、船首のドクロが目から光線を撃ってきた!

 どうやらウチ(・・)イザーナ(・・・・)に標的を推移したようやね?

 うん、それでええ。

 相手の関心をウチらへ惹き付ければ、それでええ!

 これで〈エイ〉は、少しでも射程から離れられる!

「当たらへんもん!」『キューッ!』

 ピッタリとした呼吸に、ウチとイザーナは旋回して避ける!

『キサマ! 何者だ? ()が邪魔立てをするなら、誰であろうと容赦はせんぞ!』

 いきなり宣戦布告されたわ。

 あ、せや! 自己紹介しとらへん!

「ドクロさん、こんにちは ♪  ウチ〝()(さき)モモカ〟言うねんよ? (よろ)しゅうね?」

『あ、こんにちは。こちらこそ……って違うわ!』

 怒られたよ?

 ウチ、笑顔で挨拶しただけやんな?

 明るい挨拶、大事やんな?

『と……ともかく! この〈宇宙の帝王……を夢見る帝王〉を邪魔するなら容赦はせぬ!』

 何やコメントしづらい複雑な肩書を自己紹介されたわ。

『いくぞ! ドクロ変形!』

 雄々しい叫びに呼応して、ガキョガキョと分割されていく船体!

 その内部から、腕が──脚が──頭部が──割れた船内からパーツ解放されていった!

 徐々に形成されていく人型!

 船首が直角に折れて、大きなドクロが胸飾りになる!

 頭部もドクロやから二段ドクロや!

 その側頭部からは野牛みたいな角が生え伸び、悪魔然とした禍々(まがまが)しい威風を演出しとる! 

 そして、完成したんは、全高八〇メートルはあろうかという巨体!

「ふぇぇ?」『キュキュウ?』

 イザーナと二人して驚嘆に見入ったわ!

『ドクロイガァァァーーッ!』

 ……まんまやった。

『フハハハハ……ッ! ワシは絶対に〈伝説のネクラナミコン〉を手に入れてみせる! その邪魔立てをするのであれば、誰であろうと容赦はせん!』

「根暗な巫女?」

『ネクラナミコンッッッ!』

 何や?

 お嫁さん探しやったん?

『さぁ、いくぞ! イルカ娘! 悪の名に()いて正義の鉄槌(てっつい)を下す!』

 〝悪〟なん? 〝正義〟なん? どっち?

『喰らえィ! ドクロブレェェェード!』

 ウチらを狙って振り下ろされる巨大な半月刀(カシナート)

 ()けた。

『ドクロビィィィーーーーム!』

 胸のドクロが両目から光線が放たれる!

 ()けた。

 当たるワケないやんな?

 その対比も去る事ながら、機動力かて(ちゃ)うもん。 

 せやけど、困ったねぇ?

 あの巨躯(きょく)相手では、コッチも決め手になりそうな武器があらへん。

「あんな? イザーナ?」

『キュウ?』

「ウチ、アレ(・・)やってもええんかな?」

『キューッ! キューッ!』

 意気揚々と「よし! やろう!」言うとる。

 うん、せやね?

 攻撃してきたんはアッチやもん。

「ほんなら、いくよ! イザーナ!」

『キュウ!』

 ウチとイザーナの合意で、機体(イルカ)は高々と頭上へと跳んだ!

『キュキュキュルルルルーーーーッ!』

 昇天の加速にイザーナが甲高く鳴く!

 宇宙空間でも機能する〈特殊超音波〉と宇宙量子(コスモマター)〈オルゴン〉の干渉が、プリズム光彩の大きな輪〈オルゴネーションリング〉を発生させた!

 それは連続的に発生し、神秘的光彩のリングトンネルと形成される!

 一旦、旋回に距離を取ったイザーナが、再度、トンネル目掛けて突進!

 ウチは頭部コックピットから出ると、イザーナの鼻頭へ立った!

 静かに(まぶた)()じ、カチューシャ形の〈シンクロコネクター〉に精神を集中させる。

 それに呼応して〈シンクロコネクター〉に()()まれた赤いクリスタル〈トランスコア〉が起動の輝きを息吹(いぶ)きだした!

 そして、ウチは叫ぶ!

(ギャラクシー)フォルム・メタモルアップ!」

 渾身の跳躍にヘリウムブースターの高出力を加味し、眼前の〈オルゴネーションリング〉へと飛び込んだ!

 潜る世界は、まるで御伽世界(フェアリーテール)のようにメルヘンチックや……。

 せやけど、ウチに(しょう)じるんは、超常的変化そのもの!

 徐々に巨大化していく肢体!

 宇宙量子(コスモマター)〈オルゴン〉を分子レベルで吸収融合し、質量変換しとるからや!

 此処(・・)は、それ(・・)を可能とする局地的特異空間やねん。

 無論〈OTF〉や。

 続けて、後追いに飛び込んだ〈イザーナ〉が空中分解──各パーツが〈プロテクター〉として、ウチの五体に装着されていく!

 変身(・・)を終えた現状(いま)のウチは、約四〇メートルの大きさやった。

「Gモモ!」

 凛々しくも可愛くポーズを決めて名乗る!

『ズ……ズルい……』

「ふぇ? ズルい?」

 ドクロさん、ワナワナ震えだしはったねぇ?

『ズルいぞ! 何だ! 〝巨大な()えっ()〟って!』

「知らへんよッ! ビシッと指差して、何を糾弾してんのんッ?」

『こっちなんか〝胸にドクロ〟だぞ! 誰が見ても〝悪役〟だろうが!』

 そんならドクロ取って、改名したらええやんな?

『おまけにノリノリで美少女戦士然と決めポーズとは! そんなに人気が欲しいのか!』

 ノリノリやあらへんねん。

 コレせんとプロテクター機能しとる〈イザーナ〉との感覚伝導率が落ちんねん。

 そういう仕様やねん。

 裏マリーの趣味が全開やねん。

 本音はウチかてイヤやねん。

 恥ずかしいねん。

『もう、いい……こうなったら、正々堂々〝悪役〟として生きてやる!』

 あ、やっぱ〝悪役〟なん?

 っていうか〝正々堂々とした悪役〟って、何?

『喰らぇぇい! イルカ娘! ドクロバース──』「モモーーッ! 無事ーーッ?」『──トォォォッ?』

 突然、後頭部への猛突進を喰らってつんのめったわ……何かする前に。

 って、アレ〈Gリン〉や!

 リンちゃんとミヴィークの〈(ギャラクシー)フォルム〉形態や!

「ふぇぇ……リンちゃ~ん!」

「アンタはーーッ!」

「ぎゃん?」

 飛びつこう思うたら、グレードアップしたハリセンアプリで叩かれたよ?

 巨大なイルカ娘が巨大なシャチ娘にドツかれたよ?

「ぅぅ……リンちゃん、痛いよ?」

潤々(うるうる)しながら『痛いよ?』じゃないッつーの! アタシに心配掛けんな!」

「リンちゃん、心配してくれたん?」

「ううう……うっさい! 少しは反省しろッつーの!」

「えへへ ♪  リンちゃん、心配してくれた ♪ 」

『ぬぅぅ……仲間か!』

 あ、ドクロさんがダメージから復活しはったねぇ?

『だが! 何人来ようとも、この〈宇宙の帝王……を夢見る帝──』「ちょっとアンタ!」『──……はい』

 ハリセンをビシッと突きつけるGリンちゃんの怒気(どき)に、悄々(しおしお)と呑まれはった。

「アンタ、さっきモモに何しようとした?」

『えっ? え……っと?』

「女の子相手に何しようとしたかって()いてんだッつーの! このセクハラロリコン! 銀邦(ぎんぽう)倫理協会に(うった)えるわよ!」

『ロ……ロリ? 倫理……? ええ~~?』

 あ、困ってはる。

「あと、その趣味悪いドクロデコも取れ! ポリシーか何かと勘違いしてるみたいだけど、傍目に不快なだけだッつーの!」

『ええぇぇぇ~~~~~~ッ?』

 リンちゃん、無敵や!

『あの……スミマセン? (わたくし)、こう見えても〈宇宙の帝王──を夢見る帝王〉でして……』

「だから何よッ!」

『その……このドクロとか圧倒的な武力誇示は、ある種のアイデンティティーと申しますか……その、何と言いますか……威厳とか……ねぇ?』

「四の五の言うなーーッ!」

『てんぷくッ?』

 あ……顔面ハリセン、スパーンいったわ。

 ドクロさん、顔面押さえて苦悶しとる。

 ちょっと涙目や。

 アレ、鼻頭入ったねぇ?

「〈宇宙の帝王……を夢見る帝王〉って事は、アマチュアじゃない! 実績も無いアマが〝威厳〟とか言うな! おこがましい!」

 ……〈宇宙の帝王〉にプロアマあんのん?

『クッ……フフフ……アーーハッハッハッ!』

 フルフルと震えたドクロさんは、ややあって吹っ切れたかのように笑い始めた。

『ウキィィィーーッ! 何だ、このアホ臭い展開は! もういい! みんな壊してやる!』

 ヒステリックに『帝都 ● 語』みたいなフレーズ叫びはったよ?

 次の瞬間、宣言通りの猛攻が暴走する!

『喰らえぇい! ドクロバーストォォォーーーーッ!』

 ドクロビームに、全身砲門の一斉掃射!

 星間ミサイルも節操なく打ち上がった!

「危な! 危ないて!」

「ちょっと! やめなさいッつーの! 宇宙塵(デブリ)をバラ撒くな!」

 ウチとGリンちゃんは各部バーニアの機動力を()かした体捌(たいさば)きで、無差別攻撃を()けまくる!

『アハハハハハハッ! アハハハハハハハハハハハハッ!』

 狂気めいた高笑いに、破壊の権化と化すドクロさん!

 っていうか、泣いてへん?

 ちょっと涙声なんは気のせい?

『暴走したっていいじゃない! だってドクロだもの!』

 今度は〝相田み ● を〟みたいなフレーズ言い出しはった。

 活用、間違っとるよッ?

「ったく、環境汚染すんなッつーの! こうなったら……モモ、アレ(・・)やるわよ?」

「うん!」

 提案に乗った!

 ウチとリンちゃんは相手の左右から挟み込むと、両手合わせの五指を花と開く!

 その掌を標的へ向けると、不可視の(かせ)が自由を奪った!

「「エコロケーションホールド!」」

『な……何ィ!』

 足掻く獲物!

 せやけど、脱出は不可能や!

 コレは〝高出力特殊超音波を利用した拘束技〟やねん!

 イザーナがイルカ(・・・)なんは伊達(だて)やない!

 同型のミヴィークかて、そうや!

 それ(・・)の高出力による相乗効果やから、拘束威力は半端やない!

『う……動けん!』

 足掻くドクロさん!

 好機(チャンス)や!

 Gリンちゃんが高々と跳び、ウチは腰に構え据えた握り拳へと気合を()める!

 各々の脚と拳にエネルギーが(ほとばし)った!

「タァァァーーーーッ!」

「ヤアァァァーーーーッ!」

 頭上からはGリンちゃんの脚槍(きゃくそう)が!

 正面からはウチの鉄拳が!

 ブースター全開のダブル特攻が、同時にドクロ船長を突き抜ける!

「「Gクロスファイナル!」」

 二人の軌跡が十字架と輝いた!

『ヌォォォーーーーッ!』

 エネルギー臨界の奔流(ほんりゅう)──「「乙女の奇跡!」」──G少女の決め台詞が起爆コードと作動!

 ……いや、ウチらかてホントはやりたくないねん。

 そういう〝裏マリー仕様〟やねん。

 ともあれ大爆発!

 あ、殺生はイヤやから破壊はせんよ?

 破壊はせんけども……ドクロさんは噴き飛んだ!

 星間の彼方へと!

『おのれぇぇぇーーッ! 覚えていろォォォーーーーッ!』

 あ、悪役の〝お約束〟になる捨て台詞吐いていったわ。

 〈帝王〉やなくて〈雑魚(ザコ)〉ランクのやけど。





 現場を少し離れた宙域で〈エイ〉は漂流しとった。

 どうやら被弾ダメージで(ちから)()きたようや。

 ウチとリンちゃんはイザーナ達を横付けにすると、その船体へと取り付く。

 その外見から予想した通り、構造はウチらの宇宙航行艇(コスモクルーザー)と一緒やった。

 せやからハッチを開けるんも造作無い。

 勝手知ったる……や。

 そして、操縦席には意識を失った少女が()った。

生体測定器(バイタルセンサー)に異状なし……気絶しているだけね」

「良かったぁ」

 安心するウチを見て、リンちゃんは優しく苦笑した。

「モモ、この()お願い」

 救出対象をウチに預けたリンちゃんは、コンソール機器を操作し始める。

「何すんのん?」

「マリーに連絡。座標指定して〈ツェレーク〉に回収しに来てもらう」

「ふ~ん?」

 ウチは膝枕に寝かせた少女を眺めた。

 小柄な銀髪美少女やった。

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