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空の詩  作者: 出雲屋
4/4

凪の詩

完結です。よろしくお願いします。


初めての結婚式は海の見えるビーチ。

早めたのは病気のせい。

でもチャベルは真っ白で。



久しぶりに戻ったコ・サムイは青く輝いてた。

私は後悔なんてしていない。


この島で結ばれ。この島に祝福された。

これ以上幸せな事などないと。あ。出来れば。。お腹の子をみたいな。。。


ガンは私の旦那さんになった。


タイで言う所の成功者だけど。長くは生きれない。

少しずつ。笑うように。でも眼がまだ。。


大丈夫!パティ強い!


頑張っていかないと!お嫁さんだからね!


そして死ぬときにこの島に来よう。

ガンと会った島だから。



□□□


パティとの生活はとても幸せだ。今まで一人でいたせいか。

少し照れくさい日常が嬉しかった。

毎日顔合わして。日本語教えたり。

タイ語を教わったり。生活を重ねるうちに仕事から家に帰るのが楽しみだった。


しかし。2009年。


幸せな俺達とは他に。バンコクでは集会、デモが各地で起き。不安な情勢は仕事にも影響を与えだす。


その年は主にTシャツ姿のデモ行進だったが。翌年入るとキナ臭くなる。



しかし。そんなことより。


悲劇が始まりだす。


パティは死産だった。


そこは期待してはダメと言われても期待をして。

お腹が大きくなるに連れて笑いが増えた。

エイズの子はエイズに。もちろん理解している。


が。その子は息をすることもなく。この世をさった。凄く小さな女の子だった。


パティは悲しんだ。

俺にできる事は慰めるだけ。

二人にとって辛い日々が続いた。


どこかで二人の子がいればと。希望になればと。



外には赤シャツが集まり。

ここの国は暑いから。四季があやふやになる。

もうすぐ春を迎えようとしていた。


観光客が主なので仕事も減りだす。


「スタッフの何人かも。休みをとりデモへ参加しています」


「ああ。オーに聞いているが。バリケード本部、ルンビニー公園、役所近くと王宮周辺。サイアムも気をつけたほうがいい」


「とりあえずバンコクは少し離れたほうがいいな。チェンマイとか行ってこい。仕事ならんしな」


清水さんとそういう話をする。

流石にタクシーすら連れて行ってくれなくなり。

明るいセントラルにはバリケードが増えていた。



 そうして三月の半ばから。

一月の間チェンマイに休暇で訪れた。

いろいろリフレッシュしたいのでパティも喜んでくれた。


観光地であるが観光客はほとんどなく。

おかげで安くゆっくりできた。



「ふぁっ!ガン!水白いよー何で?」


「なんでだろ。。バスクリン?でも気持ちいいぞーああ。。温泉最高☆」


「・・よくそんな長く入れるネ。。バカなの?」


「風呂はいいもんだ。パティもおいで♪誰もいないし。」


「もう。エッチ♪」


『イマスケドネーあら若いワー☆』


「オバちゃん。。。内緒ね(笑)あっちにはサウナが! カッ!!」


温泉があるのはいい事だ。日本に帰ってないし。


チェンマイも市街では物騒な集団いたけど。

こっちは集まってカラオケしている。。おい。。

店も最小限開いてるだけで温泉には地元の人が使っていた。


・・平和だなぁ。


『あらあら〜イープンさん。かわいい子を連れて。まぁまぁ?リンゴ食べる?』


『一応嫁です。。』


『まあ見慣れないカンジだね。お嬢さんはイサーンのほうかしら?』


『え?何でわかるの?』


『訛りひどいしイサーン語を使ってるわよ。ゾウは今動かす人いないけど果物はたくさんあるよ。ほらマンゴー』


『ありがと!みんな優しいね♪ガン』


田舎って温かいな。心もあたたまる。

ただクーラ壊れたまま。

まさか蚊帳で寝るとは思ってもいなかったけど。。。

だけどパティも俺も。回復できたと思う。


□□□


それから戻ると。


センターポイントのビルが崩れていた。

道路が焦げて。オーナーも険しい顔していた。

泊まる客は。俺達とタイ人だけだ。

あれだけにぎやかな市場は散乱とし。

出店も三割しか開いていない。


悲しんでも仕方ない。やれる事をやろう。


だんだんと騒動も納まっていき。半年が過ぎた。


やっと普通のバンコクに戻ってきた。

にぎやかな市場と。にぎやかな日常。


ただ。パティは発症した。


出産の出血や体力。

度重なる薬物に体が耐えれなかった。

小さな体に無理をさせた。



寝たきりではないが。


――出て歩く事が減った。



□□□


「サムイ行こう!ガン」


「はい?」


「海がみたいの!」


まあいいか。少し仕事も落ち着いてきたし。

何よりパティがわがまま言うのは久しぶりだ。


無理せず飛行機で行こうとしたが、バスがいいと(かたく)なに言うもので。

カオサンから長距離移動する。


周りは相変わらずの白人だったけど。

パティの顔色は良くなったみたいだ。


ずーっと窓をみて。

手をつなぎ。なんか新婚旅行みたいだ。


夕方にはフェリーに乗り込み。


パンガン経由でサムイに向かう。


フェリーにはそんなにお客は乗っていない。フルムーンは来週か。涼しい船外のタラップで。星をみて二人寄り添う。


「ガン。ごめんね私。。もう長くないと思う」


「!!なんでそんな事を」


「だから。思ってた事を言う。私ガンにあった時に言ったよね?笑っていないって」


「初めなんでかな?と考えた。でも悲しい事を多く見たんだね。お寺で。救ってあげなさい。そばに居てあげなさいと。聴こえた気がした」


「だから。今は幸せだ!すごーく幸せ。子供は残念だけど」


やめてくれ。涙が止まらない。


「パティ。。ごめん。俺のせいで病気になって」


「もう!ガンは泣くんじゃない!笑ってよ。。。ねぇ・・キスして」


星空の下で。キスをした。

それはいつもより深く。軽くなった体を抱き込み。


・・ペティの口からは血の味がした。


「私が死んだら。この海に流して。お願いガン。ガンは海が好きだから。ネ♪」




サムイについて。次の日彼女は立てなくなった。


食べるのを拒み。薬も飲まない。

マリファナを吸って落ち着いていた。


「なんて言うの?それ。」


「ガンジャ。うふふ。ガンと一緒だね。痛みが和らぐの。ガンと同じ♪」


だんだん痩せていく姿を見るのは。辛い。


パティの死が目の間にいて。煙と。青い日差しがサムイの最後の記憶だ。



ーその後1週間。パティは死んだ。

その日は低気圧が過ぎ。



  海は凪いで 鏡のような凪だった 




タイの習慣かどうか知らないが。

墓はない。埋めるか流す。


ペティの祈っていた中腹にある寺院で葬儀を行なった。



☆☆☆

簡易的な葬儀を終え。


俺はずっと泣いていた。


「なあ。何を悲しんでいるんだ?」


いきなり清水さんに殴られた。


「こうなる事理解った上の事だろうが!」


「結婚式の時。パティに言ったんだ。お前のほうが先に死ぬぞ?ってそうしたらどう言ったと思う?「ガンをよろしくお願いします」と。」


「なあ?ひどいと思わないのか?お前は移した確信犯だぞ?あの娘が何があろうが。少なくとも今日死ぬ事はなかった」


やめてくれ。。。やめて。。。


「ましては一度妊娠させ。出産をさせ。お前が殺したようなもんだ。違うか?」


うぁああああ。。。うぁあああ。やめて。。くれ。


「初めパティにあった時に。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。。」


ううっ。うぁああああああああああああああああ!

うううっ。ううう。。。パティ。。パテ。パ。。。

ああああああああああああ!


「少なくとも。お前は救われた。。あの娘は恨んでいない。ずーっとな。。」


「だからこそ!感謝しろ。パティと一緒になってからお前は笑えだした。。。でもな?あの娘。可哀想で。。ウッ。。。仕方ないんだ。。殴って悪かったな。。。。元!しっかりしろ!パティが望むのはなんだ?」


パ。。パティが。。望むもの?


「お前が幸せに笑う姿だ。だから!絶対引きずるな!泣くんじゃねえ!!」


パティが望むもの。。



結婚する前から2年も一緒にいるが。。



俺は何もわかっていない。


パティは俺を救ってくれた。

何があっても。ずっとそばに居てくれた。

ずっと眼を見てくれてた。。


うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーっつ!

パティ。パティ。パティ。。


 ・・・ガン ありがと 幸せ・・ネ・・


―――パティの最後の言葉が刺さる―――



翌朝。


悲しんでいても仕方ない。

俺には時間がない。


少しでも。生きてるうちにできる事をしよう。

パティが望んでくれたように。


笑え。パティがくれたものを大事に。

命がある限り。


 


 それから清水さんとは仕事で連絡はするけど、会う事は減った。思い出してしまうのだろう。悲しいタイの女の子を。



ーーー


・・1年後 電話が鳴る。


「ハローハロゥ?」


「よー元気そうだね。山本だけど生きていたか?」


物語が。動き出す。



その少年は一度も笑っていない。

あぁそうか。パティはそんな風に心配してたんだ。


ガン。。いや。ガンジャ先生で行こうー




タイトルの由来だけ初めに考えましたが。

ここまで辛いとは思いませんでした。


スピンオフ。ありがとう御座いました。

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