第5話
「私、どうすればいいかな?」
彩音が、休日に電話をしてきた
昨日の夜に飲み会があり、その後2人で会わないかと誘われたらしい
飲み会には、彩音を含めた販売部の女性3人と製造部の坂下さんが参加した
坂下聡樹
面倒見がよくて女性にモテるが、酔っ払うと女癖が悪くなり絡んでくる
その飲み会でも酔っ払っていたらしい
「酔っ払ってたから誘ったこと覚えてないかな?」
覚えてないかもしれない
でも、覚えていなくても説明されれば行く人だ
自分のことは後回しで後輩を優先する
そういうところがモテる
でも私は全くときめかない
むしろひいてしまう
結局、その日は2人で出掛けたらしい
「デートっすね!」
重原さんと2人で仕事中
オシャレなレストランに2人っきりで行くのはどう思うかと聞いたら、重原さんはこう答えた
やはり、あれはデートだ
たぶん彩音は、坂下さんのことが好きだ
「重原さんは、オシャレなレストラン派ですか?それとも居酒屋派ですか?」
この2つのどちらを選ぶか
選んだ方が一緒の相手と相性がいいと、どこかで聞いたことがあった
私は断然居酒屋派だ
小洒落たものは好きじゃない
大きめの皿に少し料理がのっているより、小さめの皿にたくさん料理がのっている方が好きだ
そのとき、坂下さんが通りかかった
「オシャレなレストラン派の人が来ましたよ」
坂下さんが、私と重原さんを見てニヤニヤしながら去っていった
重原さんもニヤニヤしていた
大の大人がニヤニヤしてるのちょっとな
そんなことは口に出さずに、重原さんに同じ質問をした
「自分は断然居酒屋派っすね」
それから数日後、彩音と食事に行った
坂下さんの秘密を知ったらしい
結局、秘密の内容は教えてくれなかった
その日の彩音はずっと考え込んでいた
次の日、また食事に誘われた
「完全に騙された」
それを聞いた瞬間、今日の出来事を思い出した
坂下さんが、今度期間限定で出店するお店のリーダーになったのだ
彩音は、坂下さんに会社をやめると聞かされていたらしい
もう会えないのかと思った彩音は、考えた末に坂下さんに告白し、付き合うことになった
その後それは嘘だったと聞かされ、このまま付き合い続けるのか、それとも今のうちに断るのか悩んでいる
明日、坂下さんと会う約束をしたため、私に相談しにきたという訳だ
「やめておきな」
坂下さんは、わざと嘘をついたのだ思う
彩音の気持ちに気づいていて
坂下さんの仲良い人達はほとんど彼女持ちだから、焦っていたのだろう
坂下さんは本当にモテる
あの飲み会に参加した販売部3人とも、坂下さんのことが好きだ
他部署にも、坂下のことが好きな人がいる
ただ、告白されないだけだ
逆に言うと、その状況さえ作ればあとは簡単だ
「やめておいた方がいいよね」
そうは言っていたが、おそらく彩音は付き合い続けることを選ぶ
坂下さんのような男性にハマる人は、そう簡単に諦めることは出来ない
たとえ友達を失ったとしても、恋には勝てない
やめた方がいいとわかっていても、そう簡単にやめられるものではない
それは、私も