第3話
「研修にいたよね?」
食堂でダウンコートの男性に声をかけられた
この人こそが、一之宮喜野
既婚者である
ああ、今は話しかけないでほしい...
私は婚活がしたいんだよ!
独身じゃないと意味が無いの!
そんなことを思いながら軽く挨拶をした
1ヶ月後、配属先が決まった
私は製造部
藤原彩音は販売部
それぞれ希望の部署になった
「他に既婚者いますか!?」
配属初日、食い気味に聞いた私に他の人は少しひいていた
でもそんなことは気にしていられない
結婚相手を探さないと
私が次に選んだのは、もちろん独身の人だ
大村孝太郎
一言で言うと、優しさの塊
いつも笑顔で、気遣いができて、とても優しい
私は大村さんに狙いを定め、積極的に話しかけた
大村さんは、私の質問に笑顔で返してくれた
そして、私に質問をしてくれたりもした
これはいける
このまま仲良くなって付き合って結婚するぞ!
そう決意した
入社して初めての2連休の前日
思い切って大村さんを誘ってみた
誘ってOKされてデートするんだ
そう思っていたのに
「俺なんかより藤原さんと行ってきなよ」
まあそう簡単に上手くいかないよな
でもここで諦めるわけにはいかない
「私は、大村さんと2人がいいんです!」
「...」
...あれ?反応がない?
気まずい、とても気まずい
ウィーン
2人きりだった空間に、別の人が入ってきた
そして、大村さんは出ていった
...逃げた
逃げた?
逃げたー!?