第2話
松崎美鈴
18歳
高卒
今日は、待ちに待った入社の日
1人暮らしして1週間
まだまだ綺麗なこの部屋の、クローゼットの鏡の前で気合を入れる
「よし!結婚相手探すぞー、おー!」
私がこの会社でしたいこと、それは婚活!
だって、女は普通結婚して子供産むでしょ?
こんな事言ったら今の時代やばいかもしれないけど
とにかく普通になりたいの!
これから、私の幸せな婚活が幕を開ける
はずだった
新入社員の控え室
机は1つ、ソファーが2つ
私が部屋に入ると、既に1人スーツ姿の女性が座っていた
「初めまして」
どうやら、この女性も新入社員らしい
「藤原彩音です。よろしくお願いします」
「松崎美鈴です。よろしくお願いします」
失礼のないように、且つ笑顔で、たわいもない話は続いた
入社式も無難にこなし、昼休憩
「入社式緊張したね」
「ねえ、緊張したね」
テーブルは5つ、椅子が各テーブルに3つずつ
部屋の中央にあるテーブルに、向かい合わせで座っていた
私達の声は、食堂中に響き渡っている
他の人は、誰も話さない
いや、恐らく聞いているのだろう
新入社員がどんな人なのかが気になっているのだ
ガチャ
ドアが開いた
「...お疲れ様です」
「「お疲れ様です」」
私はドアに背を向けていたため、顔は見ていない
ブラウンのダウンコートを着ているその男性に、私はビビッときた
「きたかも...!」
「ん?どうした?松崎さん」
「え!?いやー、あははは」
いけない、私のセンサーが反応したところを見られた
私は、好きになる男性を選ぶときにいつもこのセンサーを働かせる
私の運命の結婚相手、いざ!
翌日、新入社員研修1日目
私は製造部で研修をした
この会社は、製造部、営業部、販売部、総務部で構成されている
製造部のどの社員も、直接私に関わらなくても気にしているのが伝わってきた
そりゃあ気になるか
皆黙々と作業をしている分、監視されている感が強かった
私にいろいろ教えてくれた男性は、とても仕事ができるオーラがあった
高身長で細身
話し方が簡潔でキリッとしている
「言っただけじゃわからないだろうから、メモしてきた」
新入社員のためにメモまで用意してくれるだなんて
ちょっと汚い字が可愛い
ギャップ萌えというやつだ
それから研修期間中、その人が私の世話係になった
「でね!めっっっちゃかっこいいの!」
昼休憩中、藤原彩音と2人で話していた
「その高身長イケメンの名前は?」
「一之宮さんだって!」
今日の話題は、もっぱら一之宮さんについてだった
家に帰り、手洗いうがいをしてスーツを脱ぎ
「はあー、今日も疲れたー」
といつものルーティーン
これから食事をして洗濯をして、ってのは後で
今は今日の余韻に浸りたい
「一之宮さん...」
スマホで名前を検索
Twitterがヒットした
「YOSHIYA...」
確かロッカーには、一之宮喜野と書いてあった
プロフィールをチェック
画像リストをチェック
「...ん?子供?...子供!?」
そこには、子供の写真がたくさんあった
一之宮喜野、既婚者だったのかー!?