孤高の背中
邸に戻ると案の定、アンナが怒ってたのは言うまでもない。
「お嬢様!!お一人で外に出るのは危険です!」
「はい・・・」
「いいですか!ここはアクエリアスです!絶対に安全とは言うわけではありません!」
今後は一人で外出はしないようにときつく言われてしまう。
「ごめんなさい。お爺様の薬草を」
「言ってくだされば私が」
買い物に出かけていたアンナにこれ以上仕事を増やしたくなかったのだが余計心配させてしまったのだと思い謝る。
「アリシア、薬を塗ってくれ」
「私は貴方のお茶が飲みたいわね。お説教は今度でもいいでしょう」
「お二人とも」
両親と同じぐらいアリシアに甘い二人にアンナはげんなりする。
「はい、ただいま」
アリシアはすぐにフランツに薬を塗る準備とお茶の用意をする。
「私は夕飯の支度をしてまいります」
「ありがとうアンナ」
せかせかと動きながら窓を見ると月が姿を見せていた。
真っ暗な夜に光を照らす一場の光を見上げていた。
同時刻王宮から月を見上げている青年がいた。
「アラン様」
「ロザリーか」
月を見上げているアランに声をかけるロザリーは悩まし気な表情をしていた。
「いかがなさいました」
「なんでもない・・・ただ月が綺麗だと思っただけだ」
暗い夜を照らす光を見上げるアランは孤独だった。
「黒を美しいという彼女は不思議な方でしたね」
「変な女だ・・・貴族の癖に共をつけず森に入るなど」
普通ならありえないことだった。
「そうですね。少し変わった方ですが・・・・あの方も少々変わり者でしたが」
「あの老婆か。あれはこの国一番の風来坊だ」
二人が良く知る人物を思い浮かべる。
「アラン様」
「俺はこの国の為、兄上の為に生きていく。それだけでいい」
他は何もいらない。
異端児と呼ばれ忌み嫌われた存在であっても最愛の兄を支え守ることこそがアランにとって存在意義になっていたのだ。
だが月を隠す闇は広がりを見せていた。
「大変ですロザリー様!!」
そこに現れたのは王宮に仕える侍女だった。
「何事です!」
「ユリウス様の容態が!!」
この国の太陽が少し、また少しと消えていく不吉な影がすぐそこまで忍び寄っていた。