海の国アクエリアス
水の精霊の加護を持つ国アクエリアス。
そこは海の国と言われる程美しい国だった。
「見えたわ」
「お嬢様、あまり顔をお出しになってはなりません」
水面が輝く美しい場所だった。
潮風に頬があたり心地よく感じ、嫌な気持ちが吹き飛んでしまうようだった。
漸く元気を取り戻したアリシアにアンナは笑みを浮かべるも窘める。
「お婆様は浜辺で待ち合わせのはずなのだけど」
「ええ、アメリア様との待ち合わせは」
キョロキョロと見渡すと。
海岸沿いに向かうとハンカチを降る一人の婦人がいた。
「アメリア様ですね」
「そうね」
「何故か旗を持ってます」
「ええ・・・」
少しばかりこの時は見なかったことにしたかった。
正直恥ずかしかったのが本音ではあるのだけど無視をするわけにもいかなかった。
「良く来ましたねアリシア」
「ご無沙汰しておりますお婆様」
ナタリーと同じ笑みを浮かべるアメリアに頭を下げる。
「さぁ邸に参りましょう!長旅で疲れたでしょう?」
そう言いながら馬車を引くのは
「フランツ様!」
祖父のフランツだった。
従者はどこにもいなかった。
「あの・・・フランツ様。従者は」
「そんなものはおらんぞ?なぁに私が馬を引く」
侯爵家の血筋であるのだが少々変わり者であると貴族でも有名な二人。
できることは自分でする主義なので普通ならありえないのだが、これが普通だった。
「さぁ乗って乗って!!」
「はっ…はい」
色々と不安が募るが今は流れに身を任せようと思い馬車に乗り込むのだった。