焦がれる想い
風の様に消えてしまったアリシアにアランは眉を下げた。
落ちている髪飾りを手に取りながら憂いの表情をしながら胸には空虚感が襲った。
いずれいなくなる。
その言葉がアランの心を寂しくさせていた。
人は出会いと別れがセットである。
特に人との関りにいい思い出がないアランは誰かと出会い別れることに寂しさを感じることはなかった。
今までは・・・
俺は寂しいと思っているのか。
胸がチクリと痛むアランは顔を歪めていた。
「アラン様・・・」
「なんだ?」
「まるで置いて行かれた幼子のようなお顔をされていましてよ」
ずっと人と深く関わろうとしなかったアランに驚きながらもロザリーは嬉しく思ったが運命とは皮肉だと思った。
「そういえばアラン様、今日はお見合いだったのでは」
「あ・・・忘れていた」
この騒ぎですっかり忘れていたアランはすっぽかしてしまったことに気づく。
「だが、その見合いはどうせ破談になる予定だっただろうからな」
「アラン様・・・」
「こんな俺に嫁ぐようなもの好きはいないだろう。いかにアメリアの進めであっても」
この黒を纏う自分がどれだけ忌み嫌われているか理解していた。
でも・・・
アリシアだけはこんな自分を見てくれた。
異端者だと言われ続けて来た俺をアリシアだけは。
あの絶望の中で言葉をぶつけてくれたのはアリシアで。
傷だらけになってアランを、ユリウスを守ってくれたアリシアにアランは思いを募らせた。
「アリシアはこのユリのように美しいな」
「アラン・・・」
そっと床に落ちた髪飾りを手に取るアランは焦がれるような目を向けていた。
「だが俺が手折れば花は枯れてしまうだろうに」
そっと空を見上げると月が見え始めていた。
所変わってアリシアはというと。
「お嬢様!!何故怪我をされているのです!」
「いや、ちょっと」
「ちょっととはなんですか!!お見合いをすっぽかして何をなさっていたのですか!!今日は朝までお説教ですわ!!」
言うまでもなくアンナにこっぴどく怒られ五時間に渡るお説教の後正座をさせられたのだった。




