伝説の姫巫女
この世界に沈黙が訪れる時。
清い魂を持ちし巫女が現れ、聖なる剣の助けを借り、国を滅びから救う。
その乙女は清き心を持ち正しい力を使えし巫女。
慈悲と強さの二つを併せ持ち、国を救い荒ぶる精霊を静め国を守るであろう。
「これが古くから伝わる言い伝えです」
「はぁ・・」
「その巫女様がアリシアさんですわ!!」
ビシッと指を指すロザリーだったが本人は鼻で笑った。
「おい、今思いっきりあり得ないと思っただろ」
「ええないですね?私が清らかな巫女なんてこの世の終わりがきてもありません」
「そこまでいいますか!」
正直そんなおとぎ話を信じる気にはなれない程アリシアはかなりの現実主義だった。
「ですが伝説の巫女様は優れた心眼をお持ちだったと聞きます・・・私達には持たない能力です」
「いや・・・」
「心眼は解らないけど。君は闇に飲まれそうな僕を言霊で助けてくれた。それが真実だよ」
「確かにあの時、アリシアは悪霊が見えていたな」
「やっぱりそうなのですわ!!」
本人を無視しして盛り上がるロザリーにげんなりする。
「なんてことでしょう!姫巫女様にお仕えできる日が来るなんて!」
「ロザリーさん・・・盛り上がっている所申し訳ないのですが」
「なんですか?姫巫女様!」
既に姫巫女と決めつけているロザリーに言うのは忍びない。
「私は事情があって一時的にこの国に来ているのです・・・しばらくしたらこの国を出ていくつもりなので」
「なんですって!!」
「え?いなくなっちゃうのかい?アリシアちゃん」
ロザリーだけでなくユリウスまでもがっかりした表情だった。
そこでようやく思い出す。
「あああ!!忘れてた!!」
大事なことを忘れていたことに気づく。
お見合いをすっぽかしていたことに。
「申し訳ありませんが失礼いたします」
「え?姫巫女様!!」
「ごきげんよう」
頭を下げてそのまま去ってくアリシアは小走りでそのまま部屋を出て行ってしまった。
床にはアリシアの髪につけていた髪飾りが落ちていた。




